チームとしてひとつのサイクルの終わり

 初めてのCSロス。 

 この10年、巨人のシーズンは秋からが本当の勝負だった。優勝が当たり前、最低でも3位。2度のリーグ3連覇と3度の日本一。そんな贅沢な10年間。だが2017年、11年ぶりのBクラスに終わり、ついにセ・リーグにCS制度ができた07年から続いていた連続出場が途切れた。テレビをつけたらセ・パ両リーグともに熱いポストシーズンを戦っている。妙な感じだ。巨人ファンが初めて味わう贔屓チームがCSに出ない経験…。

 今回の記事はVICTORY編集部から『11年ぶりBクラス、巨人復活には何が必要なのか?』というお題を貰った。結構ガチなテーマである。普段の自分の他媒体連載コラムは、基本的に記事タイトルもベースは自分で付けるようにしているので、こういう形態は久々だ。こうなったら、ここがダメだよ巨人軍的なタブロイド紙ぽい切り口で首脳陣批判でもかますべきなのか? 伝統の巨人軍は危機的状況だと煽るべきなのか? いや、ゴメン。やっぱり嘘は書けない。だからと言って、育成システムどうこうなんて記事も読み飽きた。

 11年ぶりBクラス。今の巨人を見て、個人的に思うのはただひとつ。「まあ、こんな時もあるよ」である。10年連続でCS出場自体が異常だ。上手くいき過ぎ、原巨人時代。例えば13連敗中、メディアでは「世代交代の失敗」という言葉をよく聞いた。確かにそれは一理あると思う。でも冷静に考えたら、球団史上最強キャッチャー阿部慎之助や、全盛期は球界最高のセットアッパー山口鉄也らと世代交代できるような若手選手がそうそう出てくるわけもない。この10年の巨人は、彼ら超一流選手の全盛期が重なり勝つことができて、その主力陣が年齢とともに同時期に衰えた。で、チーム力も必然的に低下した。組織論とか、理由づけて語ってもあまり意味はない気がする。真実はシンプルで、チームとしてひとつのサイクルが終わったのである。

巨人を支えていた逆指名ドラフト時代の終焉

 なら30億円とも言われたFA補強の失敗はどうなのか、と突っ込む人もいるかもしれない。戦力になったのは、序盤故障で出遅れた陽岱鋼のみ。山口鉄也の代役を期待された森福允彦は1軍どころか、先日のファーム日本選手権で広島のゴールデンルーキー坂倉将吾に勝ち越し3ランを浴びる失態。山口俊にいたってはお酒にKO負け食らってジ・エンド。まあFAもドラフトも、成功もあればもちろん失敗する時もある。恐らく、今後もFA補強を繰り返すだろう。だって、FA制度が出来た20数年前からずっとそうなのだから。良くも悪くもそれが巨人というチームなのである。

 問題は補強以前に編成のベースの部分だ。先ほど原巨人時代の主力の衰えと書いたが、同時に名実ともに逆指名ドラフト時代の終焉を感じる。この20年ほど、巨人を支えていたのは逆指名ドラフト組だった。97年高橋由伸、98年上原浩治と二岡智宏、99年高橋尚成、00年阿部慎之助、02年木佐貫洋と久保裕也、03年内海哲也…。ファンでも、さすがにやりすぎでしょと引いてしまう一極集中現象。93年に導入され2006年まで14年間続いた希望入団枠制度のドラフトで、巨人を逆指名した選手は延べ22名。その内、今もチームに在籍するのは00年1位逆指名の阿部と03年自由枠の内海のみである。多くの選手はすでに引退。元エースの42歳上原浩治もメジャーリーガーとして恐らくアメリカで現役生活を終えるだろう。12年の五冠達成時の投打の主軸だった阿部と内海も30代中盤から後半に差し掛かり現役最晩年。時の流れを感じてしまう。

キャプテン坂本勇人、選手会長菅野智之で再出発するチームに必要なのは…

 誰だって歳は取る。時間の経過からは逃れることができない。永遠に勝ち続けるなんて不可能だ。これが72勝68敗3分けという2017年の巨人の戦いぶりを見ながら思ったことである。マイコラスやマシソンといった助っ人陣の去就は不透明だが、オフには村田修一や片岡治大といった多くのベテラン陣がチームを去りリスタート。88年生まれの坂本勇人がキャプテン、来季からは89年生まれのエース菅野智之が選手会長に就任、秋季キャンプの主将には同じく89年組の小林誠司が任命された。さらに投手陣では田口麗斗や畠世周、野手では宇佐見真吾や吉川尚輝といった若手にも期待が懸かる。次のチームのベースは彼らである。

 みんな薄々気付いていたはずだ。チーム成績は12年日本一で五冠達成(1位)、13年日本シリーズ敗退(1位)、14年CSファイナル敗退(1位)、15年CSファイナル敗退(2位)、16年CS1stステージ敗退(2位)、そして17年4位と年々緩やかに下降していたリアル。その渦中で監督就任した由伸監督も大変だなと思う。言葉は悪いが、原巨人の後始末をさせられたわけだから。2017年の巨人は、次のチームのサイクルを始めようとしている準備期間でもあった。

 今月末のドラフトでは、ぜひ話題の清宮幸太郎(早実)を1位指名して引き当ててもらいたい。今の巨人で世間的に最も有名なのは間違いなく“地上波中継時代最後のスーパースター”高橋由伸。つまり監督が一番有名という現状。プロ入り間もない頃、由伸はペプシコーラのテレビCMに出演していたが、今の球界にそんな選手は存在しない。由伸を超える、マニアックな野球ファンだけでなく、老若男女誰もが顔を知ってるスター候補生と言ったら、清宮君しかいないのではないだろうか。

 最後に『11年ぶりBクラス、巨人復活には何が必要なのか?』というテーマで原稿依頼が来る時点で、巨人はある意味、大丈夫だと思う。勝つのが前提、負けることが非日常ということだから。週刊誌やタブロイド紙で叩かれている内もまだ大丈夫。

 本当にヤバイのは、巨人が4位に終わっても誰も騒がなくなった時だと思う。
 

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中溝康隆

著者プロフィール 中溝康隆

1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。 年間約50試合球場観戦をするライター兼デザイナー。 ブログ『プロ野球死亡遊戯』が累計7000万PVを記録し話題となる。 主な著作に『プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき』(ユーキャン)、『プロ野球死亡遊戯 さらば昭和のプロ野球』(ユーキャン)、『隣のアイツは年俸1億 巨人2軍のリアル』(白泉社)など。