Case1:【福岡ソフトバンクホークス】の場合

球団会長が早実OBで清宮自身も憧れているという王貞治氏。このパイプは大きい。直近のライバルとなりそうなのは内川聖一、デスパイネという主力クラスのため、1年目から1軍でレギュラーを張る、といった予想はしにくい。ただし、現時点でこの2人の後釜になりそうな選手は台頭してきていないため、自慢の育成システムで順調に成長することができれば2~3年後には1軍レギュラー、といった青写真も描ける。

大きなメリットは、球団として育成を「焦る」必要がないこと。人気面を考えると、どうしても1年目から無理やり1軍で起用したくなるところだが、戦力に余裕があるぶん、じっくりと下でプロの水に慣れさせることもできる。もちろん、1軍レベルの実力が身に付けば問題ないが、起用法が「球団事情」、「経営事情」に左右されないのはプラス材料。マイナス面を挙げるとすればポスティングによる移籍を原則、認めていない点。交渉権を獲得できたと仮定した場合、この部分を球団がどう判断するか、注目したい。

Case2:【埼玉西武ライオンズ】の場合

一塁、指名打者には今季ブレイクした山川穂高、外国人のメヒア、さらには森友哉、中村剛也らも控えており、「大砲タイプ」の選手層は非常に厚い。その一方で、中村、森、浅村栄斗、栗山巧、炭谷銀仁朗ら高卒選手がしっかりと主力に育っており、「高卒選手の育成ノウハウ」には一日の長がある。将来的には山川を三塁もしくは指名打者に、森を捕手に据えることで、清宮のポジションである一塁も空いてくるはず。

清原和博にはじまり、松坂大輔、菊池雄星ら高卒の超目玉選手を多く獲得してきた球団だけに、育成のみならずメディア対応などのノウハウも持つ。1年目からフィーバーが予想される清宮入団にはじゅうぶん対応できそうだ。

Case3:【東北楽天ゴールデンイーグルス】の場合

球団創設以降、生え抜きの和製大砲出現は悲願。今季、プロ2年目の茂木栄五郎が球団史上初めて生え抜きとして2ケタ本塁打(17本)を放ったが、20本以上の打者はいまだ現れていない。長打力に関しては外国人選手に頼らざるを得ない面があるため、入団となれば早い時期からの1軍出場も予想される。

懸念される点は1軍抜擢が「早すぎる」恐れがあること。田中将大や昨季のオコエ瑠偉、今季の藤平尚真に代表されるように、高卒ルーキーでも1年目から積極的に起用するというのが楽天のチームカラーでもある。田中は大成功だったが、オコエに関しては正直、早すぎた感は否めない。集客力も見込める清宮だけに一刻も早く1軍の舞台で活躍して欲しい気持ちは分かるが、じっくりと2軍で実力を見極めることができるかも、カギとなりそうだ。

Case4:【オリックス・バファローズ】の場合

今季は一塁をマレーロ、指名打者を中島宏之と、外国人とベテランが担った。数年後を見据えたとき、ライバルとなりそうな選手は現時点ではいない。また、タイプは違うが1軍にはT-岡田、吉田正尚といった左のスラッガーがいるため、清宮が早い時期に頭角を現すことができれば12球団屈指の破壊力を誇る打線が形成できそうな予感もする。

その一方で、高卒選手の育成という面では疑問符も。T-岡田も、素質を考えれば日本を代表するスラッガーに育っていてもおかしくなかった。また、駿太を育成しきれていない点もマイナス材料。成績が低迷するとFA選手や外国人など、安易な補強に手を出す悪癖もあるため、まずはじっくりと育成&起用できる「忍耐力」があるかに注目したい。

Case5:【北海道日本ハムファイターズ】の場合

選手のメジャー移籍に関しては12球団一、寛容な球団。その意味では、清宮の希望にもっともフィットするかもしれない。主力のほとんどを高卒選手が占めていることからも分かるように、育成システム自体にも定評がある。チーム事情を見ても大谷翔平、中田翔の移籍が噂されるなど、大砲獲得は急務。ただし、チームには横尾俊建、松本剛といった若いスラッガー候補も多く、意外とライバルは多い。

ただし、高卒のレギュラーを見ると、そのほとんどが「俊足巧打」タイプ。長距離砲は中田翔くらいだが、彼が本来持っていた素質を考えると、日本ハムが「育てた」と見るのか「育てきれなかった」と見るのかは判断が難しい。加えて、中田&大谷が流出した場合、お手本となるべき選手も不在となるため、「日本ハムに行けば安心」とは一概には言い切れない。

Case6:【千葉ロッテマリーンズ】の場合

昨季のチーム内最多本塁打は途中加入のペーニャ(17本)。日本人最多は鈴木大地の11本と長打力不足は深刻。一塁はシーズン最後まで固定できず、「1年目からの出場チャンス」という意味では12球団でもっとも可能性が高い。井口資仁新監督は日本プロ野球界初の「元日本人メジャーリーガー監督」でもあり、メジャー志向の強い清宮にとっては心強い点も多い。

球団の育成実績には正直不安もあるが、そのあたりも井口体制でどこまで変革できるかがカギを握る。清宮にとっての「行くべき球団」というよりは、チームにとって清宮が「獲得に向けて動くべき選手」といったほうが正しいかもしれない。

Case7:【阪神タイガース】の場合

清宮のプロ志望届提出を受け、真っ先に1位指名を公言。しかし、チームには中谷将大、大山悠輔、原口文仁といった「将来の4番候補」がひしめく状況で、清宮の獲得が現在のチーム事情にフィットするかは正直言って疑わしい。そもそも育成についてはここ数年、ほとんど実績を残せていない点からもわかるように、不安要素は少なくない。

ただし、昨年就任した金本知憲監督が推し進める育成路線は少しずつ実を結んでおり、同じ左の強打者として「監督生命」をかけて清宮を育成する覚悟をもってくれているのであれば、「阪神・清宮」の将来も見えてくる。ちなみに、清宮の父・克幸氏は大阪出身の阪神ファンとして知られている。

Case8:【横浜DeNAベイスターズ】の場合

クライマックスシリーズでも大爆発した筒香嘉智の存在が何よりも大きい。現在のプロ野球界で、清宮にとって最高のお手本となる打者は彼を置いて他にいない。筒香自身もメジャー志向は非常に強いといわれており、彼が日本にいる間に、打者としてのノウハウ、主砲としての心構えを伝授して欲しいところだ。また、ラミレス監督は日本野球とメジャー野球のハイブリット的な起用法、采配でチームを躍進させた。海外を知る監督のもとでプレーすることも、清宮にとっては大きなプラスになるかもしれない。

下克上での日本シリーズ進出を果たした勢いもあり、このうえドラフトでも清宮獲得となれば、今季のプロ野球界は一気に「横浜色」に染まる可能性もある。

Case9:【読売ジャイアンツ】の場合

早実からドラフト1位で巨人入団、となればあの王貞治以来。「球界の盟主」として個人的にはぜひ、清宮1位指名に踏み切ってほしいところだ。村田修一に戦力外を告げるなど、チームは若返りに向けて大きく舵を切った。現在の一塁レギュラーは阿部慎之助だが、年齢的にもそろそろ後継者育成は急務。近い将来、一塁・清宮、三塁・岡本和真の布陣が実現すれば、球団人気の回復にも一役買ってくれるはず。

その一方で、岡本はもちろん、昨オフに日本ハムに移籍した大田泰示など、「高卒の大砲」を育成できていない現状はやはりマイナス材料。ポスティングを認めていないという点も気がかりだ。ただし、清宮自身は小学生時代から全国の注目を浴び、自らも「観客の多い試合は大好き」と語るほどプレッシャーとの付き合い方を熟知している。何かと重圧の多い巨人というチームでも、「清宮なら……」という期待感を抱かせてくれる。

Case10:【中日ドラゴンズ】の場合

一塁のポジションは今季、おもにビシエドと福田永将が務めた。ビシエドの残留は濃厚だけに、来季も今季同様の起用法が予想される。

ただし、遊撃にルーキーの京田陽太が定着したことで、堂上直倫、高橋周平というドラフト1位コンビが一塁に回される可能性も高く、一塁は激戦区になる可能性も。なによりチームとしてはこのふたりの高校生スラッガーを育成しきれていない現状があるため、清宮獲得に二の足を踏む可能性は十分ある。チームとしての補強ポイントはむしろ投手陣。その視点で見ても、清宮が現在の中日にフィットできるかは疑わしい。

Case11:【東京ヤクルトスワローズ】の場合

10月24日に衣笠剛球団社長が1位指名を明言。東京で生まれ育った清宮にとっては地元でもあり、本拠地の神宮球場は高校時代から慣れ親しんだ庭のようなもの。環境的な変化は12球団の中で最も少なく、ストレスなくプロに順応できる可能性は高い。一塁は故障さえなければ畠山和洋がレギュラー候補筆頭だが、年齢的にもフルシーズン働けるとは考えにくい。チームの若手野手には西浦直亨、廣岡大志などがいるが、ポジションも選手としてのタイプも被っていないため、ある程度早い時期からの1軍抜擢も予想される。

ただ、主力の故障離脱で出番が回ってくる、というケースよりは、しっかりとした育成手順を踏んで、万全の状態で1軍に送り出してほしいのが正直なところ。そのあたりの「我慢」ができるかも、清宮育成には重要になってくる。


指名回避を明言した広島以外の11球団、それぞれのメリット、デメリットをあげてみたが、どの球団も一長一短があるのは間違いない。清宮幸太郎という破格の素材を生かすも殺すも、球団、そして本人次第。運命のドラフト会議で、清宮幸太郎のくじを引き当てるのは果たしてどの球団になるのか。

カウントダウンは、もう始まっている。

<了>

ドラフト、隠れ注目株はコイツだ! 一芸もつ下位指名候補4選広島は、なぜ清宮争奪戦から撤退したのか? 再び脚光浴びるドラフト戦略3カ条11年ぶりBクラス、巨人復活には何が必要なのか?阪神はなぜ12年も優勝を逃し続けてきたのか? 見えた限界と“日本一”に必要な+α日ハムでブレイクの大田泰示に見る 巨人が抱える若手育成の問題
花田雪

著者プロフィール 花田雪

1983年生まれ。神奈川県出身。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行うなど、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆を手がける。