過去に例が無いほど「現役バリバリ」での日本球界復帰を果たした青木宣親

2018年、セ・リーグのダークホースは、この球団になるかもしれない。

東京ヤクルトスワローズ――。

昨季は球団ワースト記録となるシーズン96敗を喫し、セ・リーグ最下位。当然、前評判は決して高くない。それでも、小川淳司が4年ぶりに監督に復帰し、宮本慎也がヘッドコーチに就任。広島を「常勝軍団」へと育て上げた河田雄祐、石井琢朗をコーチとして招聘するなど、首脳陣を大幅刷新。「ハード」面での補強はほぼ完璧といえる。

ただ、実際にプレーする選手=「ソフト」面はというと、特に目立った補強も行わず、現有戦力の底上げでシーズンを戦うかに思えた。そんな矢先、春季キャンプイン直前の今年1月30日、「青木宣親、復帰」の一報が届いたのだ。

いわば、最下位からの逆襲へ向けた「最後の1ピース」。

この補強は、チームにとって計り知れない「プラス」を生む可能性がある。個人的にはメディアもファンも、もう少し「騒いで」いいのではないかと思うほどだ。

それは、なぜか。

過去にも日本人メジャーリーガーの日本球界復帰はあったが、青木ほど「現役バリバリ」の状態で日本に戻ってきた例はない。

参考までに過去、日本球界復帰を果たした日本人野手のメジャー通算成績、最終年成績、日本復帰1年目の成績を以下に紹介してみよう。

【新庄剛志】
メジャー通算(3年)
303試合 打率.245 本塁打20 打点100 盗塁9 出塁率.299
メジャー最終年(2003年)
62試合 打率.193 本塁打1 打点7 盗塁0 出塁率.238
日本復帰1年目(2004年)
123試合 打率.298 本塁打24 打点79 盗塁1 出塁率.327

【中村紀洋】
メジャー通算(1年)&最終年(2005年)
17試合 打率.128 本塁打0 打点3 盗塁0 出塁率.171
日本復帰1年目(2006年)
85試合 打率.232 本塁打12 打点45 盗塁0 出塁率.292

【井口資仁】
メジャー通算(4年)
493試合 打率.268 本塁打44 打点205 盗塁48 出塁率.338
メジャー最終年(2008年)
85試合 打率.232 本塁打2 打点24 盗塁8 出塁率.292
日本復帰1年目(2009年)
123試合 打率.281 本塁打19 打点65 盗塁4 出塁率.391

【田口壮】
メジャー通算(8年)
682試合 打率.279 本塁打19 打点163 盗塁39 出塁率.332
メジャー最終年(2009年)
6試合 打率.273 本塁打0 打点0 盗塁0 出塁率.333
日本復帰1年目(2010年)
53試合 打率.261 本塁打3 打点10 盗塁1 出塁率.302

【城島健司】
メジャー通算(4年)
462試合 打率.268 本塁打48 打点198 盗塁7 出塁率.310
メジャー最終年(2009年)
71試合 打率.247 本塁打9 打点22 盗塁2 出塁率.296
日本復帰1年目(2010年)
144試合 打率.303 本塁打28 打点91 盗塁9 出塁率.352

【松井稼頭央】
メジャー通算(7年)
630試合 打率.267 本塁打32 打点211 盗塁102 出塁率.321
メジャー最終年(2010年)
27試合 打率.141 本塁打0 打点1 盗塁1 出塁率.197
日本復帰1年目(2011年)
139試合 打率.260 本塁打9 打点48 盗塁15 出塁率.294

【岩村明憲】
メジャー通算(4年)
408試合 打率.267 本塁打16 打点117 盗塁32 出塁率.345
メジャー最終年(2010年)
64試合 打率.173 本塁打2 打点13 盗塁3 出塁率.285
日本復帰1年目(2011年)
77試合 打率.183 本塁打0 打点9 盗塁0 出塁率.258

【福留孝介】
メジャー通算(5年)
596試合 打率.258 本塁打42 打点195 盗塁29 出塁率.359
メジャー最終年(2012年)
24試合 打率.171 本塁打0 打点4 盗塁0 出塁率.294
日本復帰1年目(2013年)
63試合 打率.198 本塁打6 打点31 盗塁0 出塁率.295

【西岡剛】
メジャー通算(2年)
71試合 打率.215 本塁打0 打点20 盗塁2 出塁率.267
メジャー最終年(2012年)
3試合 打率.000 本塁打0 打点1 盗塁0 出塁率.071
日本復帰1年目(2013年)
122試合 打率.290 本塁打4 打点44 盗塁11 出塁率.346

【田中賢介】
メジャー通算(2年)
15試合 打率.267 本塁打0 打点2 盗塁2 出塁率.353
メジャー最終年(2014年)
出場なし
日本復帰1年目(2015年)
134試合 打率.284 本塁打4 打点66 盗塁9 出塁率.354

【川﨑宗則】
メジャー通算(5年)
276試合 打率.237 本塁打1 打点51 盗塁12 出塁率.320
メジャー最終年(2016年)
14試合 打率.333 本塁打0 打点1 盗塁2 出塁率.462
日本復帰1年目(2017年)
42試合 打率.241 本塁打0 打点4 盗塁0 出塁率.309

【青木宣親】
メジャー通算(6年)
759試合 打率.285 本塁打33 打点219 盗塁98 出塁率.350
メジャー最終年(2017年)
110試合 打率.277 本塁打5 打点35 盗塁10 出塁率.335
日本復帰1年目(2018年)

過去のデータからも、復帰1年目からの活躍が期待される

(C)Getty Images

メジャーでキャリアを終えた松井秀喜、本校執筆時点で今季の所属先が未定のイチローは別格として、青木のメジャーでの実績はこの2人に次ぐ。

さらに言うと、過去の日本人野手がメジャーで成績を残せなくなってから日本球界に復帰しているのに対し、青木は昨季も110試合に出場と、まだまだメジャーの舞台でも活躍できる実力を誇っている。ちなみに過去、メジャーで100試合以上に出場した翌年、日本に復帰した選手は青木しかいない。

今オフ、メジャーリーグのFA市場の動きは史上稀にみるほど遅く、多くの大物選手が所属先未定のままスプリングキャンプを迎えている。青木のヤクルト復帰は、本人の実力だけでなく、各球団の動向といったイレギュラーな要素が多分に影響していると言っていいだろう。

推測にすぎないが、もし青木が期限を設けず、スプリングキャンプやシーズン開幕後までメジャーでのプレーを模索していれば、獲得に手を挙げる球団は出てきたはずだ。

また、投手と比較して野手は、日本復帰後もレギュラーとしてチームの戦力になるケースが多いのも好材料だ。復帰1年目の成績を見ると、新庄剛志、城島健司、松井稼頭央、井口資仁、西岡剛、田中賢介らがそれに該当する。2013年に阪神に移籍した福留孝介も、復帰1年目こそ苦しんだが徐々に成績を上げ、40歳を超えた今も阪神の主力として活躍している。

過去のデータを見ても、青木が日本復帰1年目からある程度の成績を残すことは十分に予測できる。

メジャーでもそう見ることのできない「対応力」の高さ

加えて、彼の活躍を期待させる要素のひとつが、その「対応力」の高さだ。

青木は2012年にブルワーズに移籍してから昨季までの6年間で、実に7球団を渡り歩いた。日本では移籍を繰り返す選手に対してあまり良い印象がないかもしれないが、メジャーは違う。移籍とはすなわち、チームに必要とされているということ――。

それを証明するかのように、青木は移籍を繰り返しながらも各球団で一定の結果を残し続けた。メジャー6年間での通算打率.285は本来の実力からすれば物足りないかもしれないが、毎年のように環境が変わり、違う首脳陣、チームメイトとプレーしたうえで残した数字であることを考えると、その価値がわかるだろう。

昨季こそ打率.277だったが、それまでの5年間はすべて2割8分台をマーク。「どんな環境でも、打率2割8分台を計算できる打者」は、メジャーでもそうはお目にかかれない。

当然、この「対応力」は日本復帰にあたっても大きなメリットとなるはずだ。ただでさえ、実績を残し、勝手知ったる神宮のグラウンド。6年間のブランクがあるとはいえ、日本球界で3度の首位打者、2度の200本安打を達成した打棒に、期待しない方がおかしい。

ヤクルトの外野陣にはバレンティン、坂口智隆、雄平といったレギュラーがいるが、青木はヤクルト時代には主にセンターを、メジャーではレフト、ライトを守っており、外野3ポジションであれば守備にも不安はない。故障者の多いチーム事情を考えれば、3ポジションにレギュラー候補が4人いるというのは、首脳陣にとっても心強いはずだ。

チームは昨季最下位に沈んだとはいえ、故障者さえいなければリーグ屈指の打撃陣を誇る。山田哲人が復調し、バレンティン、雄平、川端慎吾、畠山和洋らが万全であれば、そこに青木を加えた打線は上位球団にとっても脅威となるはずだ。当然、青木以外のマークがきつくなれば、成績も残しやすくなる。

セ・リーグの覇権争いに影響を与える可能性も

(C)Getty Images

メジャーFA市場の停滞という「イレギュラー」な出来事を発端にして起きた、今回の「青木宣親、ヤクルト復帰」は、セ・リーグの覇権争いにも大きな影響を及ぼすかもしれない。

個人的には、今の青木の実力、さらにリーグに絶対的なバットマンが不在という現状を見ると、いきなりの首位打者、最高出塁率のタイトル獲得も十分あると考えている。

さらに言えば、今季の青木に期待したいのが「通算打率歴代1位」の獲得だ。NPBの通算打率は4000打数以上が既定となっているが、青木はこれにあと100打席と迫っている。メジャー移籍前までの通算打率は.329で、単純計算であと100打席すべて凡退しても、その時点での打率は.321。歴代1位のレロン・リーの.320を上回る計算になる。また、シーズン500打数を記録すると仮定した場合、125安打(シーズン打率.250)を上乗せすることでも、この数字は上回れる。

今季終了時点で、NPBの通算打率ランキングのトップに「青木宣親」の名前が記される――。

これが現実になれば、「広島、本命」のセ・リーグ勢力図も大きく変わるかもしれない。

今季、7年ぶりに神宮に帰ってくる稀代の安打製造機のバットは、それだけの可能性を秘めている――。

<了>

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花田雪

著者プロフィール 花田雪

1983年生まれ。神奈川県出身。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行うなど、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆を手がける。