あまりにも優遇されていた今大会の日本
世界バレー女子大会が幕を閉じた。日本は5-6位決定戦に敗れ、6位となった。それでも1次予選敗退に終わった男子に比べて大健闘し、東京五輪への希望はつながった、と評する記事は多い。だが、本当にそうなのだろうか。
イタリアとブルガリアで共催された男子大会と異なり、女子大会は日本で開催された。グループ分けは昨年抽選で行われた。
A組:日本(6)、オランダ(8)、アルゼンチン(11)、ドイツ(13)、カメルーン(18)、メキシコ(26)
B組:中国(1)、イタリア(7)、トルコ(12)、ブルガリア(17)、カナダ(19)、キューバ(25)
C組:アメリカ(2)、ロシア(5)、韓国(10)、タイ(16)、アゼルバイジャン(24)、トリニダード・トバゴ(34)
D組:セルビア(3)、ブラジル(4)、ドミニカ共和国(9)、プエルトリコ(13)、カザフスタン(21)、ケニア(33)
※カッコ内は世界ランキング(最新2017年8月7日時点)
バレーボールの世界ランキングは、特にヨーロッパについては実情を反映していないという声があるが、まず日本が入ったAグループには日本より格上のチームが一つもなかった。そして、実際対戦してみた印象は、アルゼンチンとカメルーン、メキシコは、「春高の強豪校より弱い」というもの。中田監督もそのあたりはよくご存知のようで、開催国特権である初戦の対戦相手にはアルゼンチンを指名。またカメルーンとメキシコ戦には控えで臨んでいる。それでも10点以上差をつけて勝ち、カテゴリーが違うのではないかという実力差を見せつけた。1次ラウンドは6チーム中4チームが抜けられる。6チームのうち3チームが春高強豪校より弱ければ…? 1次ラウンドを抜けられるのは当たり前のことに過ぎない。
しかも、第2次ラウンドのグループは、あらかじめ決まっているのだ。男子は1次ラウンドの成績に応じて4つの別々のグループに振り返られていく。女子はそのフォーミュラではなく、A組を勝ち上がったチームは、D組を勝ち上がったチームとしか対戦しない。中国、イタリア、アメリカ、ロシアとは第3次ラウンドまで絶対に当たることはない。4年前の世界バレーで日本を破ったアゼルバイジャンも、ここ数年苦手としている韓国とタイとも。プエルトリコ、カザフスタン、ケニアも春高以下のレベル。しかも、対戦の順番が、格上のセルビアとブラジルが最後の二日間になっていた。
4連敗で大会を終えた日本
強豪国であれば、リーグ戦の終盤には次のラウンドへの進出が決まっていることが多い。今回も、セルビアは日本戦の前には3次ラウンド進出が決めていた。迎えた日本との1セット目、セルビアは主力メンバーを送り出して日本をボコボコに叩いた。日本からすると、あわや10点台に乗せられないのではというお寒い内容だった。ところが、2セット目からは大砲のボシュコビッチ選手など主力選手を次々とベンチに下げ、3-1で日本が勝って、翌日の日本-ブラジル戦で日本が1セット取りさえすれば3次ラウンドへ抜けられる状況をつくった。
おそらくセルビアは、日本が3次ラウンドに上がることとブラジルが上がることを天秤にかけ、1セット目で「お試し」をした上で、容易に勝てそうな相手である日本が上がったほうがよいと判断したのだろう。第3次ラウンドでもセルビアと再戦することになったが、結果はストレートで一蹴された。
1次ラウンドではオランダにフルセットの末敗れ、2次ラウンドでは最終戦ブラジルから1セットとって3次進出を決めたあと、意地を見せたブラジルにフルセットで試合を落とした。
3次ラウンドでは前述したとおりセルビアにストレートで実力通り負け、イタリアにもフルセットで敗れて、ここでメダルの目はなくなった。だが、男子大会と違う点がここにも。5-6位決定戦というものが行われ、準決勝の2試合のあと、いわゆるゴールデンタイムに日本対アメリカの試合となった。この試合も落とし、結局日本は4連敗で大会を終えた。
グループ分けでも呆れるほどに優遇されていた日本だが、移動距離でも優遇されていた。第1次ラウンドが横浜、第2次ラウンドが名古屋、第3次ラウンドも名古屋。例えばプールBの中国やイタリアは第1次ラウンド札幌、第2次ラウンド大阪、そして第3次ラウンドが名古屋。比較すれば移動が少ない方が、疲労がたまらないに決まっている。そして、ホスト国でゴールデンタイム中継であるため仕方ないとは言うものの、全試合が19時20分開始で、今日が第3試合で明日は第2試合、と試合の開始時間が毎日のように異なる他チームとはやはり疲労度が違う。ここまでお膳立てしてもらって、結局、格上には(2次リーグのセルビア戦以外)全く勝てていないのだ。C組あたりに入っていたら、1次敗退も十分あり得ただろう。
東京オリンピックは自国開催であるから、それほど気にしなくてもいいのでは…と思われる向きもあるだろうが、この体たらくではメダルはおぼつかないだろうし、東京以降の出場権獲得も危うくなるだろう。アウェーでの実力は、アジア4位なのだから。消化試合となったブラジル戦第2セット以降や、5-6位決定戦をきっちり勝てていれば、また印象は違ったかもしれないが。今大会の「ベスト6」という順位に甘んじることなく、2年後に向けてチームを引き締めてほしい。
世界バレー・満員御礼連発の裏で大赤字のカラクリは?
現在、世界バレー女子大会が行われている。日本チームは10月14日のセルビア戦で0-3、続くイタリア戦に2-3で破れ、メダルへの望みは潰えた。19日に行われる米国との5位決定戦が、今大会のラストマッチとなる。日本戦のアリーナは満員御礼。だが、この大会での事業収益は赤字とされ、さらに今後は日本では世界バレーが開催されなくなる可能性もあるという。(文=VICTORY SPORTS編集部)
なぜポスト木村沙織は現れないのか ニューヒロイン誕生を待つ女子バレー界
2017年に現役を退いた木村沙織。女子バレー界最大のスターの後継者問題は、彼女が現役の頃から取りざたされてきた。古賀紗理那、宮部藍梨、黒後愛といった「ポスト・サオリン候補」は現れたが、彼女たちとのサオリンの違いは何か。(文=中西美雁)
全日本男子バレーは8強に遠く及ばず、2年後の五輪までに何を上積みすべきか
世界選手権でベスト8進出を目指していた男子バレーボールチーム。しかし、目標には遠く及ばず、2勝3敗の勝ち点5という結果で、1次ラウンド敗退となった。大会終了後には、中垣内祐一監督の進退も問われる事態となったが、東京五輪を2年後に控えた全日本男子は、どのような道を進むべきなのか。(文=中西美雁)
石川祐希が復帰する全日本、2年目の中垣内ジャパンが目指す世界選手権8強入り
全日本男子バレーボールチームは、来月イタリアとブルガリアで開催されるバレーボール世界選手権に出場する。中垣内祐一監督の下、東京オリンピック2020へ向けて強化を進めるチームが、世界の強豪24カ国を相手にどこまで戦えるか。掲げる目標は「ベスト8」。イタリアで経験を積んだ石川祐希も復帰する全日本男子は27日に記者会見を行い、中垣内監督、石川選手、柳田将洋選手、柳田将洋、西田有志が意気込みを語っている。(文=中西美雁)
サッカー日本代表にもお薦め? バレー全日本の日本人監督&外国人コーチの二頭体制
ロシアW杯終了後、誰がサッカー日本代表の監督に就任するかが大きな話題となっている。西野朗監督が短期間で見事にチームをまとめあげ、ベスト16進出を果たしたことも大きな要因のひとつだろう。しかし、同時に外国人指導者が持つ知識や経験も無視できない。全日本バレーボールチームが採用している日本人監督、外国人コーチによる二頭体制は、大きなヒントになるかもしれない。バレーボールライターの中西美雁さんに、その利点を伺った。(文=中西美雁)