「みんなが喜んでいる姿を見ているのが嬉しかった」昇格を決めた時の心境

―デビュー戦の次の試合について教えてください。
丹羽:アウェーで、初スタメンでフル出場をしました。試合は3対0で勝ち、プレーオフの決勝トーナメント進出が決まりました。無観客試合ではありましたが、スタジアムの外にサポーターが来て発煙灯をたいていたり異様な雰囲気の中での試合でした。

―いよいよ決勝トーナメントです。準決勝はいかがでしたか。
丹羽:負けたら終わりの状況でしたが、「楽しめた」という記憶しかありません。前回のコラムでもお話しましたが、コンディションやメンタル面の不安よりも、ビザの問題などを乗り越えて、昇格のかかる一発勝負の試合にスタメンで出ることが出来たという嬉しさしかありませんでした。ただスタジアムは殺気立っていて、僕らの方が順位が上だったので、相手のチームは引き分け、負けで敗退、必ず勝たなければいけないという状況で立ち上がりから、物凄いハイプレスで攻められましたが、その緊迫した試合の状況も物凄く楽しめていました。

―負けたら終わりの試合ですよね。準決勝は順調に勝ち進み、いよいよ決勝戦です。
丹羽:はい、セスタオは昨年もプレーオフの決勝まで行って負けていたみたいで、クラブ総動員でこの試合に賭けているような殺伐とした空気で試合をしていましたが、僕は「根拠のない自信」ってこのようなことを言うのかなと思うくらい、自信を持ちながらその雰囲気も含めて、全て自分のパワーに変えていました。決勝の試合が終わる笛が鳴った時、チームメイトや監督、会長やサポーターみんなが泣いて喜んでいる姿を見て、本当に幸せな気持ちになりました。
「自分が試合に出て嬉しい」というよりも、みんなが昇格をして喜んでいる姿を見るのが本当に幸せでした。ビザの問題とか色々あったけど、諦めずに行動し続ければこんな事って本当にあるんだなぁと、人生において忘れられない感動的なシーンでした。

「迷った時には必ずチャレンジする方を選ぶ」色んな立場を経験する事で得た俯瞰的視点

―前回のコラムでも話していた「人の幸せが自分の幸せ」だと感じた瞬間でしたか。
丹羽:そうですね。カテゴリは4部ですが、彼らは彼らなりに人生を賭けて闘っています。ビッククラブが優勝することと同じくらい、昇格することに賭けていたので、それに対して少しでも自分が力になれたのが良かったなと思いました。
少し俯瞰的に見ているような感覚で、メインスタンドで見ているサポーターのような感覚でした。

―どうしてそのような気持ちになりましたか。
丹羽:チームメイトと盛り上がり過ぎず、俯瞰している自分、当事者の自分、第三者である自分がいました。
昇格して嬉しくて、シャンパンを開けて盛り上がっている当事者の自分がいるのと同時に、それをどこか遠くから俯瞰して見ているもう一人の自分もいました。30歳を過ぎてくらいから、このような感覚になりましたが、負けた人の気持ちや他人の気持ちが色々な経験をする事によって本当の意味でわかるようになり、どんどん俯瞰して物事を見れるようになっていきました。
ずっと試合に出続けていたり、ずっと優勝していたり、良い思いばかりしていたら、気付けなかった感情がたくさんあったと思いますが、色々な立場を経験したからこそ、その時の一時的な感情に流されず、他人の気持ちを尊重しながら俯瞰して物事を見て、行動できるようになりました。

―実際に経験せずに、そのような考えを持つことはできますか。
丹羽:僕は色々な経験をして場数を踏むしかないと思っています。最近は分からないことはGoogleやYahooで調べれば全てわかる時代ですが、本当に辛い経験や、自分で掴み取る経験などは、自分自身がそこに身を置いて、実際にその経験をすることが、一番大事だと思います。何事にも恐れずに興味があること、「自分にとってこれってどんな意味があるんだろう?」と思ったことには迷わずチャレンジしてほしいです。
人生は自分自身で選択することの連続です。
その中でチャレンジをしてうまくいかなくても、次にチャレンジする時にその経験は必ず活きてきます。それはサッカー選手としてではなく、人として大事な部分なのかもしれません。
あと、起こった出来事に対して「自分にはこのことはわかりません」とはっきり言えることも大事な事だと思います。
僕自身も色々と話をしていますが、まだまだ知らないことがたくさんありますし、今から経験することがたくさんあって、もっと経験や場数を踏まなければいけないと思うので、常に自分自身にも言い聞かせて行動しています。
年齢を重ねれば重ねるほど、守るべきものが増えてチャレンジしづらくなるのは確かだと思いますが、それでも迷った時はなるべくチャレンジする選択を取り続けたいです。

―丹羽選手の家族は、不安に思ったりはしていませんか。
丹羽:そんな僕を受け入れてくれた家族なので、そこでチャレンジをしなかったら「僕らしくない」と逆に言われると思います。
家族は僕の決断や考え方を否定せず常に肯定し続けてくれているので、妻や子ども達に感謝しています。
一番身近な人が理解してくれているからこそ、迷いなく何事にもチャレンジできますし、年齢を重ねても自分らしくチャレンジを続けていきたいです。

「好奇心の塊」丹羽選手の考え方の基礎にあるもの

―俯瞰して見る自分というお話がとても興味深いです。もう少し具体的に教えてもらえますか。
丹羽:監督がミーティングをしている時も、選手としての自分と、監督やコーチ目線で見ている自分がいます。もちろんスペイン語を学びながらではありますが、「僕が監督だったらこんなアプローチの仕方をするな」というような観点で見れるようになってきて、俯瞰的な考え方を持っている自分が出てきて、もっと色々な立場からの考え方を学びたいという気持ちが出てきています。

―なぜ、そんなに学びたいという意欲が出てくるのですか。
丹羽:僕自身が好奇心の塊だからだと思います。
「本当に子どもみたいだね」と妻によく言われますし、何でも興味がありその中で自分で取捨選択していくような感覚です。
本職はサッカー選手で、良い選手になるために全てを捧げているつもりではありますが、プライベートで他業種の方とお話しをしたり、監督やコーチ目線で見る自分を持ったりすることで選手としての幅が更に広がり、より深みのある選手になれるのではないかと思います。

―どうしたら好奇心を持つことができますか。
丹羽:どうですかね。生まれ持ったDNA、遺伝、性格、自分の身近にいる出会った周りの方もかなり影響していると思います。
常に頭の中で「自分の可能性は無限大」と思いながら自分のこれからの伸び代に期待をし続けて毎日生きています。
謙虚な自分と、自信を持っている自分が両建てで存在しています。

―謙虚な自分と、自信を持っている自分のバランスは、どのように保てば良いと思いますか。
丹羽:自信と謙虚のバランスを模索している段階で、その人は謙虚な自分を持っているので、自信を持つことだけを考えてほしいです。

「決断の責任は自分自身に降りかかってくる」自問自答の末に導き出した答え

―スペイン挑戦に葛藤はありませんでしたか。
丹羽:「100%絶対スペインに行きたかったか?」と言われたら、Jリーグのクラブで日本に残ってキャリアを過ごす事も勿論考えていました。
進路を考えていた時期に練習が終わった後、グラウンドを走ったり、試合の前日にホテルで一人で考えたりしていました。
進路の事は自分の中で考えていたのですが、それは、自分の生き方や考え方、価値観は、自分が一番理解しているからだと思っているからです。「迷った時こそ自分自身に問う」ということは本当に大事だと思います。
迷った時に、「○○さんがこう言ってくれたので、こうしました」ということがよくある話しだと思いますが、僕は「それはもう既に答えが決まっていますよね?」と思います。
アドバイスを受けて、決断をすることもあると思いますが、僕は大事な決断を迫られた時には、究極一人で自問自答をし続けます。
35歳の僕がスペインに行くか日本に残るか、どちらのサッカー人生を取るのか、死ぬ直前の丹羽大輝に聞いた時に出た答えが「スペインに行く」ことでした。何度も自問自答して出した答えはどんな結果になろうとも、自分が導き出した答えなので後悔はないです。
でも、これが他人のアドバイスを受け入れて出した決断だったら、おそらく途中で心が折れたり日本に帰りたいなど途中で自分の気持ちがブレたりすると思いますし、「あの人の言葉で、スペイン行ったけど、日本に残っておいたら良かったなぁ」と言った気持ちがどうしても出てきてしまうと思います。
僕は自分で決めた決断だからこそ、スペインでチームがずっと決まらない中でも日本に帰るという選択肢はありませんでしたし、どうにかスペインでチームを見つけようと思っている自分しかいませんでした。
要は「決断の責任は全て自分自身に返ってくる」ということを伝えたいです。
「自由」とは一見良い言葉に聞こえますが、自由とは「責任を全て自分で負う」と言う言葉の意味にも置き換えられると思います。
間違ってはいけないのは、他人に相談する事が駄目なのではなく、色んな方に相談をして意見を聞いた中で、最終的に自分で考えて決断して欲しいということです。

―たくさんの方にこの言葉が届いてほしいですね。
丹羽:尊敬できる人や、親友を作ることはもちろん大切ですが、究極の決断をする時は、人に頼らず自分の中で決断してほしいです。そうしないと、決断した物事がうまくいかなかった時に、後悔したり、人のせいにしてしまいます。

―「丹羽選手だからできる」と思う人が多いと思いますが、その人たちにどのようなアドバイスをしますか。
丹羽:この記事を10人見てるとしたら、10人全員に変わって欲しいとかは思っていません。10人のうち2.3人が何かを感じてもらえたらと思います。僕は人の考え方や生き方を無理やり変えたいとは思っていませんし、この記事を読んで「自分を変えたい」「変わりたい」と思ってくれた方が、少しでも人生を変えるきっかけになってくれたらなと思います。
人、本、物事との出会いで人生が変わることがあると思うので一人でも多くの方にこの記事を読んでもらって、人生が変わるきっかけになってもらえたらと思います。


―このようにたくさんの決断と挑戦を続けてきた丹羽選手。こんな熱い男が、来季はどのようなサッカー人生を歩んでいくのか。スペインでの挑戦は続くのか?それとも、国内に戻ってくるのか?

丹羽:実は今シーズン終了後、いち早くセスタオから一年契約延長のオファーをいただいておりました。僕は、そのクラブの姿勢に心を打たれてすぐに契約を交わしましたが、ここまでクラブからのリリースが遅れたのは、21/22シーズンのビザを正式に取得するまでチームからはリリースができないことになっていました。
なので一年またスペインでプレー出来る事になりました。
今後のキャリアでどんな事があるか分かりませんが、どんな状況になっても自分で考えて、自分で決断して、自分で責任を負う。
と言うことを常に考えながらこれからも生きていきたいと思います。
今シーズンのテーマは『感謝』
感謝の気持ちを忘れず自分らしくスペインの地で闘い挑戦し続ける丹羽大輝をこれからも見届けて頂ければと思います。

【丹羽大輝コラム】Vol.7「スペインで新たな相棒 メンディの存在」

日本代表にも選出されたこともある、日本を代表するディフェンダーの丹羽大輝選手。Jリーグのガンバ大阪、サンフレッチェ広島、FC東京など数多くの強豪クラブを渡り歩き、今はスペインのセスタオリーベルクラブに所属。ピッチ外でも、復興支援活動や、ファン、サポーターの方と文通など、精力的にサッカー選手の価値を生かすために活動している。そんな彼が、Vol.7では、「かけがえのない存在」であるメンディさんとの出会いや、セスタオに練習参加してから、デビュー戦を迎えるまでの経験を語ってくれた。

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VictorySportsNews編集部