チアリーディングとチアダンスは違うもの

 そもそも「チアリーディングとは?」という方も多いでしょうから、まずは競技の基本的なことについてお話ししたいと思います。

 チアリーディングを端的に言うと、「アクロバティックな動きをする表現スポーツ」です。1対1で競ったりタイムを争うものではなく、組体操のように層を作って人を持ち上げたり飛ばしたりする 「スタンツ」、回転や跳躍など体操競技的な動きで魅せる「タンブリング」、そしてダイナミックさが魅力の「ダンス」と、さまざまな要素が組み合わさっています。

 大会の規則によって異なりますが、基本的に演技時間は「2分30秒」。技の難易度だけでなく、美しくそろった動きができているか、チームワーク、笑顔・エナジーといった表現力・パフォーマンス力が総合的に審査されます。

 ちなみにチアダンスというのは、チアリーディングからダンス要素を抜き出したもの、というイメージですね。バレエやジャズダンスなどに通じる踊りの要素が大きく、人を飛ばしたり、高いところからひねりを加えて降りてきたりするようなアクロバティックな動きはありません。

 ただ、チアリーディングにしてもチアダンスにしても、その根底には「チアスピリット」が横たわっています。人を笑顔にして励ますという、まさに「Cheer=応援」の精神です。いつもポジティブで明るく、人を元気にするという心意気が大切なので、演技する側も常に笑顔なんですよ。

 私も現役時代は笑顔を練習していました。特にチアを始めた高校時代は、鏡に向かって毎日毎晩洗面所を締め切って、誰も入ってこれないようにして汗をかき、魅せる笑顔づくりをトレーニングしていましたよ。

 当時のチームで「園花は笑顔ができないね」って先輩から言われていたこともあって。自分ではめちゃくちゃ笑ってるつもりなんですけど、普段の暮らしの中の笑顔と、チアの演技で見られる笑顔の質が全然違うことに気づき、チームメイトと見せ合いながら笑顔を鍛えていました。

幼少期~高校生~チアとの出会い

 子供のころから目立ちたがりで、スポーツにかぎらず全身を使って表現するのが好きでした。祖母が日本舞踊の先生をしていて、母はバトントワリングの選手、私自身3歳からクラシックバレエを習っていたのも関係していると思います。

 小学校に入ってからしばらくはその3つを並行していましたが、4年生のときにダンスと出会ってからはダンス一本。地元の人気スクールでジャズダンスやストリートダンスにのめり込んでいました。中学2年生のときに高校生や社会人がそろう中から発表会のメンバーに選ばれ、センターで踊れたのは本当にうれしかったです。

高校でもダンスを続けたくて、部活の練習を見学したんですがあんまり雰囲気がよくなくて。「どうしよう」と考えていたら、すぐ横でビックリするぐらいアクロバティックな動きを連発している人たちがいたんです。それがチアリーディングとのファーストコンタクトでした。

 一番インパクトがあったのは……バスケットトスかな。技をくりひろげながら宙を舞う! 流れるようなしなやかさ、躍動感を目の当たりにして、「飛びたい! 私も飛びたい!」とチアリーディングに魅了されました。

 部員は結構少なくて、全学年で20人ぐらいだったはずです。安全に競技するためにもチームワークが問われるので、すごくいい距離感で時間を過ごせましたし、お互いがお互いのことを自然とケアしていたのも心地よかったです。

 ただ正直にいうと、けっして強い学校ではありませんでした。夕方18時半が完全下校の時間だったので、平日は2時間練習できたらラッキーでしたし、練習環境が整っている私立の強豪校とはレベルが段違いでしたね。当時は全国大会に70~80チームぐらいエントリーして、大舞台に行ける8チームの常連校はほとんど私立でした。

 そんな中、私が高3のときに全国大会で4位に入ったんです。都立校がベスト4に入るのは本当に奇跡的なことだったようで、私たち以上にまわりの関係者が大盛り上がりでしたね。必死に頭を使って、昨日よりも今日、今日より明日といった気持ちで練習すること。そしてとにかく時間を作ろうと、朝練は当然、昼休みもやってました。環境のせいにしたくない一心で、チアに触れる時間を必死で増やしていましたね。

 チアリーダーとして技・スキルを磨くだけでなく、チアとの向き合い方や得たものを後輩に伝え育くむ意識は、高校時代に養われたように思います。「自分たちの代だけが強くなってもしょうがない。後輩たちが育つこと、それが自分たちの強さの証明」と常に話していました。

〔笠原園花インタビュー vol. 2〕につづく

<笠原園花>
1992年生まれ。高校でチアリーディングと出会い、大学卒業後は社会人チームに所属。2016年、日本代表として出場した世界大会で海外チームの演技に刺激を受け、17年よりオーストラリア・メルボルンで活動。18年にクラブチームの世界大会「チア・ワールド」男女混成部門で世界6位に入賞。オリンピック種目候補として注目を集める競技チアリーディングの魅力を広め、次世代を担うチアリーダー育成に取り組む。東京都稲城市出身。



VictorySportsNews編集部