子どもが満足するまで、とことん付き合う

 ジュニアテニスプレーヤーとして、目覚ましい活躍を見せる高木咲來さん。父の勲さんと共に厳しいトレーニングに励み、その実力を磨いてきた。勲さんは保育学の研究者として、大学などでの勤務経験もある。子育てで大切にしてきたのは、「子どもに寄り添う日常」を作ること。咲來さんが生まれると、毎日絵本を読み聞かせし、早い時期から、ボールや風船を用いた遊びを重ねてきた。

 勲さんは結婚を前に大病を患い、その後も心身の不調を経験した。咲來さんが生後9カ月の時に、勲さんは仕事を辞め、妻の慶子さんと交代して育児を中心に担うようになったという。
「当時飼っていたウサギを連れて外遊びに出かけたところ、クローバー畑でウサギを追いかけて、気づけば3時間。生後12ヶ月で“公園デビュー”した時には、どれくらい遊べば満足するんだろうと見守っていると、6時間近く経っていました」

 子どもが夢中になって遊んでいる限りは遊ばせ、満足するまで時間を取る。子どもが嫌なことは絶対しない、というのが勲さんの子育てのスタンスだ。赤ちゃんの頃から、嫌がることは決して強引にさせることはなかった。

「例えば、冬の寒い時期で、お風呂上がりに服をすぐに着て欲しい時に着たがらないんです。あれは本当に困りました(苦笑)。嫌がるからただしない、ではないんです。『困ったなぁ。風邪ひくよ。風邪ひいたら大変だよ』と伝えつつ、その場の『やりとり』を丁寧に重ねてきました。多分、そうした丁寧なやりとりの中で、赤ちゃんは、親を見ています。親の願いみたいなものが、自分を支配しようとするものなのか、それとも、本当に思い遣ってのものであるのか、と」

 そんな日々を重ねながら、勲さんは子どもと向き合ってきた。
「時に風邪も経験しながら(苦笑)、言葉が伝わるようになると、『本当に嫌なことは絶対にしないで』と伝えてきました。服のことも、風邪をひくのと服を着たくないのとでは、『どっちが本当に嫌?』と聞くんです。すると、『風邪をひくのがイヤ』となるので、『じゃあ、嫌なことしないようにしなきゃね』ということで服を着るんですよね(笑)。そのようにして、子ども自身が自分の行動を選び取っていくんです。親が全部先回りして決めてしまうのではなく、子どもに寄り添うことで、いわゆる『イヤイヤ期』という時期もありませんでした」

テニスは自分を自由に表現できる場所

 勲さん自身は、咲來さんが生まれるまで、ほとんどテニスの経験がなかった。
「テニスは学生時代に1年ほど経験しただけ。僕はゴルフでプロを目指していたのですが、ケガをして断念しました。テニスはゼロから始めたので、偏見や先入観がない。それが良かったと思っています。経験者だったら自分のテニスが基準になってしまい、子どものできないところにばかり目がいってしまうと思うんです」

 保育学の研究者でもある勲さん。人間は自分で生き方を選べる。我が子には、ピアノや絵画、スポーツなど、何か文化的なことに取り組んでほしいと考えていたところ、偶然、テレビから聞こえてきた言葉に引き込まれた。

「ちょうど錦織圭選手が全米オープンテニスで準優勝した時で、松岡修造さんがBelieve in yourself、自分を信じろ、と熱く語っていました。自己肯定感や自己信頼感は、保育で一番大事なこと。保育の本質と同じだと感銘を受けました」

 そこで勲さんはテニスやトレーニングについて猛勉強を始め、咲來さんが生後12カ月の時に、21インチのラケットをプレゼントした。
「テニスに触れることができる環境は整えましたが、与えてどう扱うかはこの子の自由。これだけは保証したいと思っていました」

 数多くのスポーツの中からテニスを選んだ理由は、他にもある。団体競技と違い、テニスは個人でプレーを組み立てる。
「テニスは自由に自分を表現できる場所。ポイントを重ね、ゲームを取っていくまでのストーリーをどう組み立てていくのか。ひとつの物語のように、自分を表現することができるんです」

 咲來さんが生後12カ月の時、高校総体のテニスの試合を見に行った。家に帰ると、咲來さんが自分で父のラケットを取り出してきたという。
「12カ月の子がどこにラケットがあるかちゃんと認識していて、今日見てきた光景はこれでしょ? というように示したんです。これは驚きでした」

 こうして父と子で過ごす時間に、テニスが加わった。咲來さんが初めてラケットでボールを打ったのは、1歳の誕生日を過ぎた頃。
「僕は、咲來いくよ、と声をかけて、当たっても痛くないスポンジのボールでサーブを打って見せました。赤ちゃんは最初に見たものを記憶の印象に残します。僕たちが目指すのは世界に通じるテニス。だから子ども騙しではなく、全力のサーブを見せました。最初にこれを見たなら、この強いボールが当たり前だと思い、恐怖も感じないと思ったんです。実際、その後も本格的な練習をしていく6歳になるまで一度も怖がることもないまま、僕のサーブをリターンできるまでになりました(笑)」

 咲來さんは2歳10カ月の時に、初めてコートに立つ。1時間では物足りなさそうな顔をしていたため3時間コートを借りてみたが、それでも満足しない。満足するまで続けたところ、この時も6時間が経っていたそうだ。

 子どもが嫌なことはさせない、という姿勢は、テニスの練習でも変わらない。
「トレーニングが嫌だったらやらなくていい。嫌なことをイヤイヤしていたらケガするし、効果ないからやらないでね、と話しています」。咲來さんが一番いやなのは、試合で負けること。「負けないための練習だから、本人も納得して取り組んでいるのだと思います」

道なき道を切り拓く

 咲來さんが3歳でテニスクラブに入会した時、その実力に驚いたコーチから、将来について尋ねられた。勲さんは「僕らは最初から世界を目指しています」と即答したという。
「コーチからは、この道には答えはない。常識外れのように見えることが、正解になる場合もあると言われました。その覚悟で、僕らは道なき道を歩いてきました」

 咲來さんが4歳の時、自分のペースで練習できるように、勲さんは個人でチームを立ち上げる。指導に当たる勲さん自身もテニススクールで激しい練習を重ね、指導者向けの講習を受けてきた。咲來さんの成長に合わせ、勲さんもまた指導者として成長しているのだ。

「僕のテニスの実力も上がっているのですが、最近では、僕の渾身のスーパーショットも取れるようになってきた。この先は僕が引っ張っていくのではなく、咲來が引っ張っていってくれるようになる。関係性が変わる時期が近づいてきていると思います」

そう語る勲さんの表情には、うっすらと感慨の色が浮かんでいるように見えた。

世界を目指し、道なき道を切り拓く—9歳のテニス九州大会チャンピオン高木咲來さんと父勲さん〔後編〕につづく


高木咲來(たかき・さくら)
2014年、佐賀県生まれ。Team S.C所属。1歳になる前からテニスを始め、4歳で試合に出場。9歳(小学3年生)で12歳以下女子シングルスの九州チャンピオンに。Instagramで日々の様子を発信(team.s.cで検索)。
・第76回九州・⼭⼝⾼校⽣学年別⼩中学⽣テニス⼤会⼩学⽣⼥⼦シングルス 優勝
・福岡県テニス協会2022秋季チャレンジジュニア11歳以下⼥⼦シングルス 優勝
・第41回 全国小学生テニス選手権大会 福岡予選大会2023 優勝
・全国選抜ジュニアテニス選手権 福岡予選大会 12歳以下女子シングルス 優勝
・第50回九州ジュニアテニス選手権大会兼全日本ジュニアテニス選手権'23九州地域予選 12歳以下女子シングルス 優勝

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VictorySportsNews編集部