軽井沢国際カーリング選手権大会の開幕前日、11月30日に、軽井沢町で小中高生を対象にしたクリニック「ユニクロドリームプロジェクト ジュニアカーリングクリニック」が開かれた。チーム・エディン、ソチ大会と平昌大会の2大会連続で金メダルを獲得したケイトリン・ローズの「チーム・ローズ」など4チームが、小学生から高校生の35人のカーラーたちに1時間にわたり指導した。
チーム・エディンから教わった白本創くん(10歳)は、今年1月からカーリングを始めた。YouTubeでカーリングの動画を見たのがきっかけで、ニクラス・エディンの大ファンに。まさかクリニックでエディンから直接指導してもらえるとは思わず「エディン選手に教えてもらえて、自分の夢が叶った上に、自分のストーンをスイープしてもらった時は、この思い出を一生大切にしようと思った。(将来の夢は?)エディン選手を超える選手になりたい」と感激していた。エディン選手は金、銀、銅とメダルを獲っているよと白本くんに伝えると、「金!金!金!取ります!」と元気に宣言してくれた。
また、SC軽井沢のアカデミーで普段からカーリングを練習している女子のジュニアチームの「チーム・ステラ」は、カナダのカーリング界の女王ともいえるジェニファー・ジョーンズ率いる「チーム・ジョーンズ」に教わった。昨年結成されたチーム・ステラだが、メンバーは既に長年カーリングを経験していて、全国大会出場も果たしているなど競技志向が高い。クリニックの中でも、一番実践的な指導を受けている様子だった。
メンバーの1人の鴫原凜さん(14歳)は「スイープの時の体重のかけ方とか、投げる時に足を真っすぐ引くとか、自分ができていなかったところを学ぶことができた。初めて知ったことが多くあった。とても楽しくて、良い経験になった。選手全員優しかった。海外のトップから教えてもらえるのは軽井沢国際くらいしかないので貴重な場。将来はカーリングで活躍して、皆から憧れられる人になりたい。(オリンピックに出たい気持ちは?)ちょっとあります」とはにかんだ。
長野はエディンがカーリングを始めるきっかけの場
ニクラス・エディンは参加した子供たちのレベルの高さに驚いていた。
「10歳くらいのカーラーたちを担当したが、スウェーデンではそのくらいの年齢では見られないような技術を持っていて驚いた。あと、1時間もあったにも関わらず集中力の高さに驚いた。こういったクリニックは、自分が子供の時にあったらなと思うくらい良い。若いうちからトップカーラーと交流し、技術を教えてもらうことは素晴らしいこと。こういった機会を通して、子供たちが夢を持ち、今後トップの世界で活躍したいと思える刺激を得てくれたら嬉しい」
軽井沢国際カーリング選手権大会は、1998年の冬季オリンピック長野大会のレガシー大会として始まっている。実はニクラス・エディンがカーリングを始めたきっかけは、この大会だったという。
「⻑野オリンピックでスウェーデン⼥⼦が3位になった姿を⾒たことが、カーリングを始めるきっかけとなりました」
当時12歳だったスウェーデンの少年は、長野のレガシーからカーリング界のレジェンドとなり、そして今回、長野を訪れ、次世代の日本のカーリング少年少女たちに夢と刺激を与えていってくれた。
スウェーデン代表を支えるユニクロ
今回のクリニックは、カーリングで活躍することを夢見る子供たちにとって、世界のトップ中のトップの選手たちから直に指導を受けられる貴重な場だったが、イベントを支援したのはユニクロだ。ユニクロは以前から未来のアスリートを応援する「UNIQLO Next Generation Development Program」の活動を世界中で実施しており、そのプログラムの⼀環として「ユニクロドリームプロジェクト ジュニアカーリングクリニック」を開催した。
また、ユニクロは2023年から、今回参加したチーム・エディンをはじめとするカーリングのスウェーデン代表チームのオフィシャルサプライヤーとなり、特注の競技用ウェアや、トレーニングや移動時に着用するカジュアルウェアを提供している。
最初の縁は5年前になる。ユニクロが2018年8月にストックホルムにスウェーデン第1号店をオープンした時に、当時のスウェーデンオリンピック委員会のトップが来店。委員会はパートナーを探すにあたり、クオリティ、イノベーション、サステナビリティという3つの視点を重視しており、それらの観点が、まさにユニクロがLifeWearというコンセプトで大事にしているものと合致した。それをきっかけに、スウェーデン代表チームへのウェア提供の打診がきて、2019年1月にユニクロは、スウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会とメインパートナー契約およびオフィシャルクロージング・パートナー契約を締結した。夏季や冬季のオリンピックやパラリンピックでスウェーデン代表チームへ公式ウェアを提供するようになった。当時は北京大会のあった2022年年までの契約だったが、選手たちからも好評だったいうことで、契約を2026年まで更新している。
オリンピックやパラリンピックにおける代表チームへのウェア提供のみならず、2021年にはモーグルのスウェーデン代表のオフィシャルサプライヤーになり、さらにカーリングのオフィシャルサプライヤーとなるなど、ユニクロとスウェーデン代表の関係はより深まっている。ユニクロの担当者は、両者の関係についてこう話す。
「モーグルへの提供のきっかけは、北京大会に向けてモーグルウェアを開発していた際に、選手がウェアを試着してとても気に入ってくださって、オリンピックだけではなく、ワールドカップや世界選手権などでも着用したという話をいただいたことです。北京大会に先駆けて、オフィシャルサプライヤーとして競技ウェアと、トレーニングや移動時などに着るカジュアルウェアを提供しました。北京大会でウォルター・ウォルバーグ選手が金メダルを取りましたが、彼にとっても、ウェアがパフォーマンスに貢献したと感じられたようです。その後、カーリング協会からも『すごく良いウェアなので着用したい』という打診があり、2023年からウェアを提供するようになりました」
それぞれ競技特性に合わせた開発をしている。
「カーリングはストーンを投げるときに足を伸ばすので、パンツについては引っかからずにスムーズに曲げ伸ばしできるよう、伸縮性のあるウルトラストレッチという素材を活用しています。また、撥水加工をほどこしたりと、カーリング専用に作りました。カーリングは見た目よりも激しいスポーツなので、Tシャツには、ドライ機能を取り入れつつ、汗をかきやすいところにメッシュ加工をするなど、少しでも汗を逃がす仕組みを取り入れています」
ニクラス・エディンも「競技用ウェアの機能性が高くて、ストレッチ性もあって気に入ってます。汗をかいても臭くなりにくいのもいいですね。うちのチームのスイーパーが特に好んでます。あと、世界を転戦する際に飛行機の移動等の時間がすごく長いので、カジュアルウェアも、特にパーカーが気に入っています」と明かしてくれた。
日本に限らず、スウェーデンでもカーリングの置かれている環境はまだまだ厳しいという。
「日本の方が環境整備という点では、ジュニアの育成なども行き届いており、進んでいると思います。スウェーデン国内にもちろんカーリング場はありますし、競技者は3500人ほどとそこそこいますが、ジュニア世代が育っているとは言えない。エリートレベルでやっているトップチームが数チームで、なかなか下から引き上がってこない」(ニクラス・エディン)
そういった点でも、ユニクロのスウェーデン代表、カーリングへのサポートはかなり大きいのかもしれない。