出向組が多いプロ野球、若い経営者が多いBリーグ

Bリーグの調査は、3つのプロスポーツの球団社長の年齢や属性が明らかになっています。(データ引用元:日経新聞)
親会社や大株主に所属していた「出向組」は、プロ野球が12人中10人、J1が18人中11人、B1は18人中7人。プロ野球で落下傘社長が多いことがわかります。
社長の年齢を見てみると、プロ野球59歳、Jリーグ55歳、Bリーグ48歳と、Bリーグが最も若いという結果になっています。

最も年齢の高かったプロ野球で史上最年少の35歳で球団社長になった池田純氏(前横浜DeNAベイターズ社長)は、この結果をこう分析します。

「球団を持っている会社の方にお話を聞くと、プロ野球は親会社にとって露出効果や経済価値が一番高いとおっしゃられます。このことが、プロ野球に親会社から出向する社長が多いことと関連していると思います。一方で、Jリーグは企業名をチーム名に冠することができません。“ソフトバンク“・ホークスや“DeNA”ベイスターズと違って、例えば当時“読売ヴェルディ”とは名乗れなかったわけです。そんなこともあって、企業から見れば『Jリーグのチームを保有する価値(※スポンサードではない)は限定的』と見られてしまうケースが野球よりも多くなるのが現実です。これがBリーグになると、企業名を冠することができないのは同様、さらには新しいプロリーグということもあって、今後のリーグの成熟やバスケ自体の発展という面から見て、まだ足踏みをする大企業が多いというのが現実です」

興行としての価値、露出効果を考え、プロ野球に優位性を感じているからこそ、大企業は投資をする。そうすると、企業の意向やアジェンダを背負える人、その会社の中枢にいたりオーナーと近い存在の人が社長として求められ、結果、出向組が多くなる。一方で、JリーグやBリーグは生え抜きの社長、スポーツビジネスの視点を持った社長が生まれやすいというメリットもあります。

「親会社にがんじがらめにされないのはいいことですよね。自由な発想を活かしやすい環境にあるのも大きなメリットです。しかし、良い面、悪い面の両側面があります。自由にできるけど、やはりお金がない。大企業がバックについていれば、大企業の金銭感覚のもとでお金は桁違いに回ってきやすい。プロ野球や大企業が保有するJ1の上位クラブを除けば、先立つ資金がないという状況になりやすい。球団経営における資金というのは大きな武器なので、そこをいかにして集めるかという視点も必要です」

求められるターゲットの気持ちがわかる社長の起用

自由な発想、新たな着想という面では年齢も重要です。2011年、プロ野球史上最年少で球団社長に就任した池田氏は、今回の調査の社長の年齢層をどう見るのでしょうか?

「プロ野球の60歳近い平均年齢というのは、少々高いかなと感じます。野球を観戦している年齢層、これから取り込みたい年齢層はどこなんだろうと考えると、もう少しターゲットに近い方がいい。威厳やステータス、お付き合いといった観点は二の次でいいと、個人的には思います。これからはスタジアムの内外でITやテクノロジーを使った演出・プロモーションは必須なので、その感度も高い必要があります。競合になるエンターテインメントビジネスへの興味・関心も持ち、また海外を飛び回っていろいろなところを視察してくる、ということを考えると、もう少し若い方がいいのかなと思いますね」

池田氏が社長に就任したのは35歳の時。飛び抜けて若い球団社長の誕生はニュースになりましたが、それをきっかけに球界が一気に若返ることはありませんでした。

「35歳でベイスターズの社長になった時、セ・リーグの6球団の社長で私の次に若かったのはたしか62、3歳でした。私自身も日本では最年少と騒がれましたが、アメリカに視察に行ってみたら30代前半の社長は珍しくなかった。当時、タンパベイ・レイズのGMだったアンドリュー・フリードマンは30代前半だったのですが、社長になったのは28歳です。NPBよりもビジネス規模の大きなメジャーリーグでは、若い社長が当たり前のようにその手腕を発揮しているのです」

35歳、プロ野球史上最年少球団社長が語る「若さ」のメリット

35歳で就任、5年間で球団を黒字化し、スタジアムを満員にした池田氏の実績を見れば、日本のプロ野球のフロント陣が一斉に若返ってもおかしくありませんが、プロ野球の球団社長の年齢は相変わらず60歳付近で高止まっています。

「自由な発想でしがらみなく、過去の既成概念にとらわれずに挑戦できますよね。資金力のあるプロ野球の大きな球団にこそ若い社長を抜擢してほしいと思います。若手といっても、もはや40歳は若くはない。社会的にはそれなりの年齢になっているわけですし、スポーツの枠にとどまらない自由な発想で球団経営をすることは社会との接点を持つことにもつながります」

現状では、ビジネス規模の小さいBリーグが一番若く、プロ野球との年齢差は11歳となっていますが、プロ野球こそ若い社長を起用して改革を進めるべきだと池田氏は言います。

「意識ですよね。もっと改革して、もっともっと上を目指す意識だと思います。“日本で一番”ではなく“世界で一番”になろう、中国はじめアジアの野球文化をすべてビジネスチャンスに変えよう、グローバルな視点を持ち、若い人の間に野球文化を再び構築していこう、といったような、もっと大きな夢を持って発想できる人材を起用してほしいと思います」

一方、今回Bリーグ事務局がこうした調査を行ったのは、プロスポーツの球団社長の変化、若返りの必要性を認めている証拠でもあります。

「BリーグにはBリーグの厳しさがあると思いますが、若い経営者がどんどん増えているのはいいこと。野球やサッカー、先行するプロスポーツの真似ではなく、これまでとはまったく違う、新しい世界観をつくっていってほしいと思います」

スポーツビジネスという側面から見た時、各リーグの球団社長が担う役割は決して小さくありません。日本のプロスポーツの舵取りを任される若い人材の登場が待たれると同時に、起用する側にも意識の変革が必要なのかもしれません。

<了>

取材協力:文化放送

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毎週木曜日レギュラー出演:池田純
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