「競輪」の魅力をうまく伝えていきたい

 ルールやレース展開の話になると、オリンピック競技になっているKEIRIN(ケイリン)との比較が挙げられます。僕らがやっているものを「漢字の競輪」と区別されるのですが、音の響きが同じでも、やはりイコールにはならないのだと思います。
 僕らがやっているのは公営競技で、その特徴が色濃く出ます。競輪は公営競技であるが故に観客やファンの声を聞く必要があります。実際にお金を出して車券を買ってくれて、それを元に僕らは生活資金を得ています。だからこそ、やはりプロとしては必ず意識しなければなりません。
 競輪とKEIRINの違いをうまく伝え、僕らがやっている競輪の魅力をも広めていきたいとは思っていますが、なかなか難しいです。
 初めて競輪を見るような人たちに、「オリンピックには出場しないのですか?」と、よく聞かれます。その際には、「正直、そんなレベルではありません」と返答しています。ライン戦になる競輪であれば、さまざまな駆け引きがあって、そこから勝機を見出せます。ですが、KEIRINのようなスピード競争では、そうはいきません。ただ、初めて見るような人には、そんな競技性の違いはわからないですよね。日本の競輪界でトップクラスに君臨している選手が日本の代表として五輪に出場するのは当たり前という考えは、至極当然のことだと思います。

SNS隆盛の時代だからこそ感じられた「温かさ」

 実際に、熱心なファンの人たち以外は競輪とKEIRINは同じ競技と思っていることが多いように感じます。ですから、五輪などのKEIRINで結果を出せば、やはり競輪も注目を浴びることになるのは間違いありません。
ただ、選手の立場で言えば、公営競技の競輪を走りながら、五輪のKEIRINでメダルを目指すというは困難極まりないと思います。競輪で斡旋されたレースをすべて走りながら、別競技とも言えるKEIRINのトレーニングを行うとコンディションが整わず、どちらでも結果が出ない二兎を追う者は一兎をも得ずといった状態に陥るかもしれません。
KEIRINは最終的に個人の脚力の戦いです。駆け引きを重視するライン戦を主とする競輪とは、戦い方や戦略も変わってきます。あくまでも個人的な意見ですが、競輪がKEIRINのような脚力重視のスタイルになると、その面白味は半減すると思います。競輪は五輪競技で言うと、スケートのショートトラックのような面白味を兼ね備えています。それを踏まえると、タイムを競うわけではないですがKEIRINはスピードスケートのほうに近いと捉えています。
競輪の面白味をひと言で伝えるのは難しいのですが、競輪は駆け引きが多くさまざまな戦略や戦い方があります。そこから選手の気持ちを汲み取ることができ、人間性が見えてくるところに魅力を感じてもらえるとうれしいですね。

 このように人間性があらわになるのが、競輪の魅力のひとつと言えます。だからこそ、僕はレースのプロセスを大切にしています。単純にレース結果だけでなく、どう考えてどう走ったかというところまでファンは見てくれています。
 もちろん、すべてが成功するわけでなく、失敗することも多々あります。そういったときには、いろいろと言われたり聞かれたりすることがありますが、僕は幸いにしてメディア露出の多いほうなので番組やコラムなどを通して、極力レースについて説明するようにしています。個人的にもどうしてそうしたのかを説明したいと思っています。そういった僕の説明が、競輪への理解を深めることにつながってくれると良いですね。
 SNSの発展した現代でそういうことをすると、さらに炎上するのではないかという恐怖もありましたが、ありがたいことに僕のファンは優しい人たちばかりで温かい意見が多く助かっています。

(協力)チャリロト パーフェクタナビ編集部
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チャリロト「パーフェクタナビ」では、競輪・オートレース・自転車競技の最新情報を毎日発信。競輪選手やオートレース選手のコラムも数多く連載中。
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VictorySportsNews編集部