まるで人間がカメラを操作しているかのように撮影

 NTTSportictが展開している、スポーツ映像を自動で撮影・配信できるサービス「STADIUM TUBE」は、このようなシステムになっている。

 AIカメラ1台が撮影して映像を作り出せるのは、パノラマワイド映像とAI自動編集映像の2種類。AIは撮影している競技のルールを理解しているだけでなく、ボールと選手の位置も認識しているため、試合の状況を判断・分析することが可能。野球の撮影の場合には野球専用AIカメラ「DoublePlay」という、ホームベース側と外野席側に設置した2台のAIカメラが自動でスイッチングし、2つのアングル映像を自動撮影・編集することができる。

 AIが編集する映像は、見たいシーンによって撮影モードを選択することが可能で、①Auto Camera(ボール寄りの臨場感あふれる映像)、②Tactical Mode(全体を俯瞰した練習やコーチング向け映像)、③Fixed Mode(固定カメラのような定点撮影モード)の3つがある。

 そして、撮影した映像の自動配信が可能なオリジナル配信サイトを作成することも可能で、事前に設定しておけば自動で配信される。さらに、広告配信オプションや映像販売オプションなどを利用すれば、収益化も可能となっている。このシステムを利用することにより、誰でも簡単に試合の撮影ができ、その映像をインターネット上に配信できるようになっている。

── AIが競技のルールなどを理解しているとのことですが、これはどういうことでしょう。

「AIにそれぞれの競技のルールや選手、ボールの動き等を学習させてあるということです。そのため、試合中のプレイのどこにカメラの焦点を当てるべきか、映像をどのように編集すればいいかが判断できるようになっています。現時点で対応できる競技は16競技となっていますが、将来的に競技数が増えていく可能性もあります」

 AIは、日本語で「人工知能」と呼ばれるように、これまで人間の脳が行ってきた認識や推論、問題解決などをコンピューターを用いて行うもので、膨大なデータをインプットして“学習”させることで、精度を高めていく。STADIUM TUBEのAIカメラも、スポーツのルールや動きの膨大なデータをインプットして学習させることで、まるで人間がカメラを操作しているかのように、試合の流れを理解して撮影することができるようになっている。

さらに臨場感のある撮影も可能に

 ところで、昨年12月に行われたサッカーのワールドカップの日本対スペイン戦で、ゴールライン上にボールが1ミリだけ残っている決定的瞬間をとらえた「三笘の1ミリ」の写真が、大きな注目を集めた。この写真は、スタジアムのゴールラインの真上、地上50メートル近くのところに、ゴールの瞬間を撮影するためにカメラマンがいたために撮影できたものである。

 普通の試合であれば、このような起こるかどうか分からない瞬間のためだけに(ゴールでさえ、試合によっては全く入らない場合もある)、地上50メートルの場所でカメラマンが90分の間ずっとカメラを構えることなどほとんどないだろう。しかし、AIカメラであれば、どんな場所に置いても、文句を言わずに自動的に撮影してくれる。

 プロ野球の中継では、一般的に8、9台のカメラで試合を撮影しており、迫力ある映像を届けるためにアップで撮ることも多い。そのため素早いカメラワークが要求され、ベテランのカメラマンが長年の経験をもとに動きをある程度予測して、その瞬間を逃さずカメラで捉えていく必要がある。

 一方で「ホームランカメラ」と呼ばれる外野席後方から撮影するカメラでは、ロングショットで撮影することが多く、ホームランが出た場合には、打者が打ってから打球がスタンドに入るまでに数秒かかるため、AIカメラでも打球を追っていけそうである。

── AIカメラでも。将来的にはこのような臨場感のある撮影が可能になるのでしょうか?

「今のところ当社の野球が撮影できるシステム『DoublePlay』はバックネットからとセンターのバックスクリーンからの2つのカメラで撮っているんですけれども、これ以外に他のカメラも入れて、さらに臨場感のある映像を自動で作ることも、AIで学習させることによって、将来的にはプロ野球のテレビ中継も可能になると思っています。そういった撮影や映像の高度化は、これから目指してやっていきたいと考えているところです」

 競技によっては、撮影で素早いカメラワークがそれほど必要ない場合もある。実際、STADIUM TUBEで撮影・配信された試合の映像を見ても、グラウンドやコートを広く撮影する場面では、人が撮影したものと遜色ないレベルで撮影されている。今後はテレビ中継されるような大きな大会や競技の撮影でも、AIカメラで完全無人中継される試合が増えていくのは間違いないだろう。


常設型AIカメラ最新モデルS3後編に続く

VictorySportsNews編集部