今回の「くら寿司・トーナメント」は過去最多の1590チームが出場し、全国各地で予選を経てファイナルトーナメントが実施。プロ野球の東京ヤクルトスワローズの本拠地であり、東京六大学野球も行われる神宮球場での開催は、子どもたちにとっての財産になると小山さんはこの大会が持つ価値について言及する。

 「東は神宮球場ですし、西だったら甲子園。ここは子どもたちが憧れる場所だと思うんです。神宮のグラウンドでできることは子どもたちにとって“やりがい”。自分が憧れているプロ野球選手がプレーしている場所だし、プロまで行かなくても大学で野球を続ける子たちにとっても憧れの場所ではないでしょうか。普段は学校のグラウンドや河川敷のグラウンドで白球を追いかけている子たちが、こういう立派なグラウンドでできるというのはやりがいになっていると思います」

 2020年から大会の協賛として加わってきたくら寿司だが、小山さんはメディアでの露出や保護者からの反応により、「くら寿司・トーナメント」が育ってきている実感を得ているという。そのなかで、参加費を設けず無料での開催となっている本大会の将来的なあり方や目指す場所はどのように考えているのか。

 「私たちは(運営側ではなく)サポートする立場として言わせてもらえば、どんどんチーム数が増えて認知が高まっていくことは期待したいですし、大会に参加する人が増えて知名度が高まるにつれてレベルも上がっていくと思うんです。レベルが上がって競争力が高まれば、野球の底上げにつながって、日本野球界のレベルアップにもつながっていく。そういったところを微力ながらでも支えることができれば、それは光栄なことだと思います」

 現代は少子化が進んでいることに加えてさまざまなスポーツが台頭している背景がある。2023年には10代の野球の推定人口が174万人(笹川スポーツ財団調べ)とされ、2001年の282万人からおよそ100万人の減少が伝えられている。競技人口減が叫ばれる今の時代においても、小山さんは日本という野球大国が持つ普遍的な力については前向きな想いを抱いている。

 「日本を世界的な立ち位置で見たときに、野球は世界に誇れるスポーツのひとつ。確かに学童野球の競技人口が減っている現実はありますが、だからこそ実際に大会を運営していただいてる方や、私たちのような民間の会社が一緒に連携しあうことは、持続可能な野球界の発展にも繋がっていきます。私たちがリーチできる層として『学童野球』のジャンルは親和性が高い。『くら寿司・トーナメント』を通して少しでも野球に関わる子どもたちが増えていけばいいと思っています」

©️第5回くら寿司・トーナメント2024 第18回学童軟式野球全国大会ポップアスリートカップ 星野仙一旗争奪

 第5回の「くら寿司・トーナメント」は22日に決勝が行われ、関西第一代表として出場した伊勢田ファイターズが前年度王者の新家スターズ(大阪)を下し、初出場初優勝を飾るとともに京都勢初の戴冠となった。来年以降の開催へも期待が高まるなか、今後も支援を続けていくうえで、くら寿司として子どもたちに大事にしてほしい気持ちは何か。

 「野球をやっている子にとって、ボランティアの方をはじめとしたサポートがあるからできていることをより実感できる大会である気がします。野球をやるにはご家族のサポートもいりますし、道具を買ったり遠征などでお金もかかるでしょう。その分、周りの大人たちに対しての感謝の気持ちを大事にして野球をやってくれると思っています。実際に子どもたちががむしゃらに野球をやる姿やプレーの様子を見ていますが、『くら寿司ありがとう!』とか、『くら寿司に行ってきたよ!』とか言うのを聞くと、やっていて良かったなと思います」

 小山さんは野球大会を開催することで、子どもの将来的な人間形成にも好影響をもたらすと、副産物について言及していた。ポップアスリートカップとして18回、「くら寿司・トーナメント」と冠がついてからは5回の開催を終え、大会としての認知度も高まりつつあるなか、子どもたちにとってこの場所を目指すことが憧れになったらいいと語る。

くら寿司株式会社 広報宣伝・IR本部の広報部の小山祐一郎さん

 「大会に参加することはエントリーすればできますが、ここでチャンピオンになる価値は、今すでに(ポップアスリートカップとして)18回の歴史があって高いものがあります。大会運営に関わる全ての方々のおかげで、日本を代表する学童野球大会として育っていると思うので、その価値をさらに高めていきたい。子どもたちが『くら寿司・トーナメントでチャンピオンになる!』ということを目標にしてもらえるような大会になったらいいなと思います」

 過去最多の出場チームが参加し、子どもたちの目指す場所として存在感を年々増しつつある「くら寿司・トーナメント」。コロナ禍や野球人口の減少など、苦難も経験しながら大会への協賛を続けるくら寿司が、野球大会を通して将来の日本を背負う子どもたちの未来を支えていく。

企業がスポーツを通じて、みらいを担う子どもたちを支援する想いとは?〔前編〕

VictorySportsNews編集部