ビッグデータ活用はビジネス界の常識
年間900万人を超える観客の年齢や観戦頻度、行動パターンを分析し、集客につなげる。Jリーグが発表したビッグデータの活用には、データ分析にデロイトトーマツ、マーケティングに電通やチケット販売のぴあ、物販の楽天、ヤフーはポイントサービスを提供、NTTグループはネットワーク設備を担うなど、IT関連企業大手各社が関わることになります。
ビッグデータを活用したマーケティングはビジネスの世界ではもはや常識。スポーツ界でも、多くの成功例があります。横浜DeNAベイスターズ社長在任中に、観客動員数を110万人から194万人にアップさせ、年間でわずか5試合だったスタジアムの満員試合数を54に増加させた池田純氏は、ビッグデータの活用についてこう語ります。
「あらゆるデータを把握するというのは、マーケティングの基本です。顧客データを集めて、どんなお客さまがスタジアムに足を運んでくださっているのか、どうしたらリピーターになってくれるのかを分析する。顧客のターゲティングを目的としたデータ収集・分析は当たり前にやり、進化させるには、ビックデータを活用する必要があります。スポーツ界でそれをリーグとして取り組むJリーグの施策には注目です」
ITの発達で以前とは比べものにならない量のデータが得られるようになりました。観客のデータにしても、性別、年齢などの定量的なデータはもちろん、趣味嗜好や消費行動の傾向、価値観など、定性的なデータの取得、分析も可能になっています。ビジネスの世界ではこうしたデータをもとに消費者の「ペルソナ」を明確に設定し、プロファイルすることが当たり前になってきています。
「Jリーグが、日本のIT企業の大手と組んでこういう取り組みをすること、大々的に発表してそれが話題になること自体は、素晴らしいことだと思います」
池田氏は、目に見える観客増という結果を得るためには「データ活用の先、このデータを利用してどういう施策を打てるか」にあると言います。
ブームを創り出せるか? 鍵を握る「ビッグデータ活用の先」にあるのもの
Jリーグは、DAZNでお馴染みの英動画配信大手パフォームグループと10年、2100億円という大型放映権契約を結んで以来、NTTグループとの「スマートスタジアム」事業構想を発表するなど、ファンエンゲージメントを高めるためのプロジェクトを進めてきています。
今回の発表は、こうした動きをさらに加速させる動きですが、在任5年で目に見える結果を出し、横浜DeNAベイスターズを球界一「スタジアムにお客を呼べる球団」に変えた池田氏は、「ブームを創れるクラブ、リーグをも牽引するブームとなれるクラブが生まれるか?」を成功のキーワードに挙げます。
「Jリーグ全体がもう一度ブームを創り出すことができるかどうかは、各クラブの取り組みが重要だと思います。プロ野球でいえば、カープとかベイスターズのような盛り上がりを見せるクラブ、ブームを生み出すクラブがどれだけ現れるのか。こうしたクラブがリーグ全体に大きな影響を与えるのです」
カープ女子人気が話題になった広島カープ、横浜スタジアムを満員にする横浜DeNAベイスターズのように、Jリーグの中から独自色を打ち出し、それぞれの努力でブームを創り出すクラブが出てくることが、Jリーグの積年の課題である観客数の低迷、いまひとつの微妙な状況を打破することにつながると池田氏は指摘します。
「プロスポーツクラブの場合、どうしてもすぐに『強ければいい』という考えになりがちです。もちろん強い方がいいのは間違いないのですが、後から強くなれば良いという考えもあります。ニワトリが先か、卵が先かじゃないですけど、チームの強化だけに気をとられるより、スタジアムに足を運んでくださるお客さまの方をしっかりと見て、楽しませることを考える。それを含めて、スポーツ界を牽引するほどの、社会が驚くニュース性の高い取り組みを立て続けに実現し、チームやクラブの存在自体がブームになれば、ファンが増えてチームもどんどん強くなっていくという構図もあるんです」
池田氏は、今回Jリーグが打ち出したビッグデータ活用は、ブームを創り出す前提として必要不可欠なものとした上で、観客増を目指すためには各クラブの独自の努力がさらに重要だと言います。
「お客さまが来る理由、来たくなる理由、『楽しかった! また来たい!』と思う理由をクラブがどうつくるか」
Jリーグとしては、各クラブが構築したシステムを使いこなせるように、IT人材を教育する育成講座を9月末から始めるとしていますが、技術の活用、ビッグデータの有効利用の先にある「ブーム」の姿をとらえられるクラブが誕生するかどうかが、今回のプロジェクトの鍵を握ることになりそうです。
取材協力:文化放送
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毎週火曜日レギュラー出演:池田純
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