DAZN会員数が100万人突破! 隆盛を誇るOTTサービス
海外でもインターネットを介したマルチデバイスを主戦場に移しつつあるスポーツ中継の波が、一気に日本にも押し寄せています。昨夏、Jリーグと10年間で約2100億円という大型契約を結んだ英・パフォームグループの動画配信サービスDAZNは、NTTドコモとの提携、相次ぐ有料コンテンツの放映権獲得で攻勢をかけています。
Jリーグとの契約が強調されますが、DAZNは、先月末行われた“世紀の一戦”、メイウェザー対マクレガーを日本独占ライブ配信するなど、さまざまなスポーツの放映権を次々に獲得しています。
DAZNやスポナビライブをはじめとするスポーツ中継配信サービスは、インターネットの接続環境の進化によって登場した「テレビに代わるメディアの在り方」を示すコンテンツ供給方法としても注目を集めています。
日本でも、Netflix (ネットフリックス)やHulu(フールー)、Amazonプライムなどの配信サービスが一般的になりつつありますが、こうしたサービスはOTT(over-the-top)サービスとしてドラマや映画、音楽、そしてスポーツといったコンテンツを取り込み、急激に普及が進んでいます。
かつてはCATV(ケーブルテレビ)の国として、4大スポーツをはじめとするスポーツ中継のためにチャンネルごとに契約する文化が根付いていたアメリカにも、CATVとの解約を表す“コードカッティング”という流行語が生まれるなど、OTTの波が押し寄せています。
日本ではDAZNが“黒船”として大きな話題を呼びましたが、アメリカでもサッカー専門OTTサービス、「fuboTV」が、Northzoneや21世紀フォックス、スカイ、Scripps Networks Interactiveなどから総額5500万ドル(約61億円)を調達したと米フォーブス誌が報じています。
世界中で高騰するスポーツの放映権料
横浜DeNAベイスターズ前社長の池田純氏は、スポーツ中継をめぐるサービスの変化が放映権に大きな影響を与えていると語ります。
「話題になっているDAZNも参加していたんですけど、9月4日にクリケットのインディアン・プレミア・リーグ(IPL)の入札が行われたんですね。DAZNやソニー、Facebookなんかも応札していたんですけど、結局スター・インディアという会社が入札しました。この入札額がまたすごくて、2018~22年までの5年間で、約2700億円ですからね。これは高騰しすぎかなという気もします」
日本では馴染みがありませんが、クリケットはインドをはじめとする旧イギリス領では人気のメジャースポーツ。約13億の人口を誇るインドのマーケットを見込んでという側面もあるかもしれませんが、各種スポーツコンテンツの評価額は上昇の一途をたどっています。
「日本のプロ野球だと1球団あたりのコンテンツは、年間で約15億円、最大でも20億円ぐらいなんですよ。民放各局はその投資額を回収するために、広告を集めてテレビで流しています。これがOTTになると、その対象は国内だけではなく世界になって、Jリーグのように1年単位で約200億円となるわけです」
球団社長としてコンテンツホルダーの立場にいた池田氏は、日本のプロ野球の価値をどう見ているのでしょう?
「どこが買うのか? 世界規模で見た普及度を考えると、野球とサッカーでは経済圏が違うなど考慮すべき点が多々あります。現実的にターゲットを考えると、アジアの韓国、台湾、日本の3カ国がメインになります。その3カ国で日本の野球へのニーズがどれだけあるのか? 選手の移籍を含めた交流も増やさなければいけないでしょうし、仕組みを含めてアジア戦略を組んでいく必要がありますよね。その中身によって放映権料の数字はまったく変わると思いますが、DAZNの実例でJリーグが年間約200億円というのは事実としてあるので、この倍は狙えるのではないかと思います」
インフラとして定着が進むOTTの先行きは?
急速に普及するOTTサービス、瞬時にマーケットが世界規模になる利点をどう考えるのか? 池田氏はつい最近、OTTサービスがもはやインフラの一つになっていることを実感する体験をしたそうです。
「旧友のスイス在住のイギリス人が来日していて、ドライブしていると、『お前の国はまだDVDなのか』って言うんですよ。レンタルDVDの店舗形態というビジネスはヨーロッパにはもうなくなったと」
かつて、ウエブサービスとして「送料無料の定額DVDレンタルサービス」をメインに据えていたNetflixが、20年の間にレンタルDVDキラー、コードカッティングの筆頭になったことからわかるように、OTTサービスはインターネットをめぐる環境の変化に伴い急激な成長を続けています。
「日本はガラパゴスじゃないですけど、新しいものと古いものが融合していて残っていく国ですよね。そこに良いところももちろんあります」
放映システムの安定や解説者の問題、コンテンツの見せ方など、急激な成長に「走りながら」の面も見られるOTTサービス。今後日本でもさらに成長が見込まれるのは間違いありませんが、高騰する放映権料の収支はどうなるのか? 先を行く欧米の例をキャッチアップしつつ、その動向を注視していく必要がありそうです。
<了>
取材協力:文化放送
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