WATS GOIN' ON〔Vol. 7〕日本バスケットボール界をひとつにまとめた力業 そして華々しきBリーグ開幕

Bリーグのワッツ

 ふたたび、青森ワッツである。bjリーグに参加していたことによって、B(2)リーグにも参加できることになったこのチームは、輝かしい開幕の年にどんな戦績を残したか。

 9月24日の初戦(対・サイバーダイン茨城ロボッツ)は落として、黒星スタート。最終戦績は29勝31敗とわずかに負け越したが、前シーズン(bjリーグ最終年)よりは敢闘して、東地区4位で終えた。この時点で、ワッツの選手平均年齢は、24.8歳(シーズン当初)。リーグでもっとも若いチームだった。その若さゆえか、フリースローのチャンスを活かせない場面が特に目についた年でもあったという。

『東奥日報』(2017年5月23日付)によれば、選手がファールを受けた回数は1228回と、リーグで2番目に多かった。ファールを受けた回数が多いということは、フリースローを試投できるチャンスが増えるということでもあるが、ワッツは1122回ものチャンスのうち64.2%しか成功させることができなかった。この成功率は、リーグ・ワースト2位だ。その一方で、ディフェンスリバウンド(1864回)については、B(2)リーグで最多を記録している。

 チームが発足した2013年から見れば、ホームゲームの観客動員数(1試合平均)は、1638人、1735人、1701人、1730人(Bリーグ初年)と着実に増えたが、当初からの目標である2000人には程遠い。それでも、この年、B(2)リーグで2000人のラインを超えたのは熊本ヴォルターズだけで、全18チームの3分の1にあたる6チームが1000人を下回る平均観客動員数にとどまっていた事実を考慮すれば、ワッツはまずまずのスタートを切ったと評価するのが適当だろう。

地獄

 けれど翌年(2017-18)のワッツは、ブースターの期待を裏切る結果に終わる。9月30日の開幕戦(信州ブレイブウォリアーズ)から、福島ファイヤーボンズ、秋田ノーザンハピネッツ戦まで、怒涛の6連敗。その後も負けが込み、終わってみれば、18勝42敗。前シーズンの勝率48%から、勝率30%へ。これまで、緩やかにでも右肩上がりだった1試合の平均観客動員数も、初めて前年を下回ることになった(1730人から1587人に減少)。言わずもがな、チームを運営する上できわめて大切な協賛企業も減った。

 執行部は、佐藤信長ヘッドコーチを契約解除(2018年2月)し、北谷稔行をヘッドコーチに据えるが、翌19年のワッツは東地区・最下位に沈んだ。続く2020年は、コロナ禍の影響でシーズン途中に打ち切られ、東地区4位。21年は、またしても東地区最下位で、アソシエイトヘッドコーチになっていた北谷が退任。B(1)リーグの広島ドラゴンフライズを率いていた堀田剛司を迎えるが、シーズン開幕から2勝23敗という泥沼で、こちらも契約解消。アシスタントコーチの竹内峻が代行を務め、翌2022年2月にフェルナンド・カレロ・ヒルがヘッドコーチに就任。

 ヒルは、米国独立リーグやベネズエラでコーチを歴任し、日本でも、(ヘッドコーチの)ルイス・トーレスとともに佐賀バルーナーズを一躍強豪に育て上げた経験豊かなコーチだったが、青森ワッツには水が合わなかった。泥沼からの脱出はかなわず、B(2)リーグのワースト新記録となる30連敗。2期連続の最下位でシーズンを終えると、わずか3カ月前に就任したばかりのヒルが退任を表明した。計52試合で、5勝(47敗)の数字から考えれば当然だろう。

 もちろん、ヒルだけの責任ではない。コロナ禍の影響で、センターとして期待されたライアン・リチャーズの合流が遅れたこと。シーズン開幕から10試合で193得点、89リバウンド、57アシストを挙げていたマイケル・クレイグを「選手統一契約書に対する違反行為」で契約解除せざる得なくなったこと。クレイグが犯したのは「第9条」——薬物検査の拒否や検査での陽性、刑罰法規に抵触する行為、クラブの秩序を著しく損なう行為——に対する違反だった。しかし、こうした事情はブースターには関係ない。

 このままでは青森ワッツは空中分解してしまう——ヒルの退任直後、チームのゼネラルマネジャーとなった北谷は追い込まれていた。

WATS GOIN' ON〔Vol. 9〕につづく

VictorySportsNews編集部