統合か、消滅か
さて、難航し続けていたふたつのリーグの「統合」は、どのようにおこなわれたのか。最終的に確定した未来については、全員が知っている。2024年12月の時点で、日本にはBリーグが存在しているからだ。ならば、このBリーグはbjリーグとNBLの統合の結果なのかといえば、それも違う。
2014年末にFIBAから強烈な制裁を受け、2015年1月に開催されたタスクフォースの会議には、これまた強烈な面々が揃えられていた。Jリーグをプロ野球に次ぐ巨大スポーツ産業に育て上げた川淵三郎、FIBAのインゴ・ヴァイス、JOC(日本オリンピック委員会)専務理事の青木剛、日本体育協会専務理事の岡崎助一など10人のタスクフォース・メンバー、オブザーバーとして文科省から久保公人、FIBAからは事務総長のパトリック・バウマンが入った。
ここから、約2カ月後におこなわれたタスクフォースの会議までの間、集められた強烈な面々は、常識では考えられない速さで事態を整理し、新たなロードマップを構築した——統合ではなく、消滅。
過去5年以上にわたって「統合」をめぐる駆け引きが続いていたのは、bjリーグとNBLが、いずれも自分たちに有利なルールで「相手リーグを吸収すること」に囚われてしまっていたからだった。
そこで、タスクフォースは第3の道を選んだ。bjリーグでもNBLでもない、まったく新しいプロリーグを発足させることを決めたのである。そして、当時、bjリーグとNBLに属していた36のチームに対して、所属するリーグに「退会届」を出さなければ新たなリーグには参加できない旨を通知した。こうして、10年にわたって競い合い、反目してきたbjリーグとNBLは、その姿を消したのだった。
Bリーグ開幕
2016年9月22日、代々木第一体育館。会場は満員御礼。縦28メートル×横15メートルのコートがLEDディスプレイで埋め尽くされ、LDHのアーティストたちがオープニングアクトとハーフタイムショーを彩った。
栄えある開幕戦を任されたのは、旧NBLを代表する強豪アルバルク東京と、bjリーグ最大の成功例ともいえる琉球ゴールデンキングス。圧倒的な攻撃力を見せたアルバルク東京が最大15点差まで引き離すも、琉球も粘り、最終スコアは80対75。接戦をものにしたのは、アルバルク東京だった。
開幕戦のチケットは1カ月以上も前に発売されたが、瞬く間に完売。追加チケットが発売されるほど、世間の耳目を集めたが、フジテレビ系列がおこなった地上波の全国生中継の数字は期待された2桁には届かず、5.3%の視聴率にとどまった。だが、翌々日の24日に各クラブの初戦のチケットが発売されると、こちらも次々に完売したため、関係者はようやく旨をなでおろしたという。
その後、11月15日には、『スラムダンク』の作者である井上雄彦が創設した奨学金の一期生として、アメリカ留学も果たした並里成——bjリーグでプレーした後、渡米してNBAデベロップメント・リーグのトライアウトに挑戦していた——が帰国し、滋賀レイクスターズに入団するなど、華やかな話題が続いた。36歳の誕生日を迎えても田臥勇太(栃木ブレックス)は躍動し、さらに10歳も上の折茂武彦(レバンガ北海道)は国内トップリーグ通算9000得点の偉業を成し遂げた。
その一方、シーズン中の17年2月に鹿児島レブナイズの資金繰りが悪化し、「公式試合安定開催融資」を申請するなど、まだまだ不安要素も尽きなかったのであった。レギュラーシーズン60試合を終え、年間チャンピオンシップに駒を進めたのは、8チーム。
【レギュラーシーズンの上位6チーム】
・リンク栃木ブレックス(東地区1位/旧NBL)
・アルバルク東京(東地区2位/旧NBL)
・シーホース三河(西地区1位/旧NBL)
・琉球ゴールデンキングス(西地区2位/旧bjリーグ)
・東芝川崎ブレイブサンダース(中地区1位/旧NBL)
・三遠ネオフェニックス(中地区2位/旧bjリーグ/JBLからbjに移籍)
【ワイルドカード】
・千葉ジェッツ(旧NBL/bjリーグからNBLに移籍)
・サンロッカーズ渋谷(旧NBL)
やはり、多くを占めたのは旧NBLのチームだった。トーナメント方式のチャンピオンシップでファイナルに進んだのは、栃木ブレックスと川崎ブレイブサンダース。2017年5月27日、代々木体育館。85対79のシーソーゲーム。1万人を超える観客の前で、栃木ブレックスが栄冠を掴んだ。キャプテンは、あの田臥勇太だった。