実力者揃いの日本のバンタム級

 軽量級王国を謳歌するいまの日本でも、とりわけ充実しているのがバンタム級である。チャンピオンに君臨するのはWBA(世界ボクシング協会)の井上拓真ひとりだが、WBC(世界ボクシング評議会)の王者アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)にアタックする中谷潤人の後にも世界タイトルマッチのリングに手をかけそうな実力者がひしめき、ひょっとしたら4団体を日本人が独占する可能性もあるのだ。

 世界ランキング1位の西田凌佑(六島)、石田匠(井岡)はタイトルマッチ目前。西田がIBF(国際ボクシング連盟)で、石田がWBAでそれぞれ「挑戦者決定戦」に勝利してトップコンテンダーの地位を獲得した。

 西田はサウスポーのボクサータイプ。アマチュア出身でプロ転向後、たった8戦で世界1位に上った——とだけ書けばボクシングエリートのようだが、中学の頃は陸上選手で高校までボクシングにまったく関心がなかったのだからユニークだ。ボクシングを始めたのも、高校で続けるつもりだった陸上部の部員数が足りず駅伝出場の夢を断たれ、友人に誘われたからというものだった。
 
 プロでの転機は4戦目で元世界フライ級チャンピオンの比嘉大吾を番狂わせで破った一戦。一躍関西のニューヒーローとなり、昨年8月にはメキシカンのクリスチャン・メディナとのIBF挑戦者決定戦に12回判定で勝利し、世界へのウェイティングサークルに入った。

 IBFの現チャンピオン、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)は井上尚弥にTKO負けしている選手だが、階級ナンバーワンの声もあがる技巧派。西田とのマッチアップには世界タイトルマッチらしいハイレベルな中身が期待できるだろう。
 
 WBA1位の石田はスーパーフライ級時代に一度世界挑戦の経験を持つベテラン。シャープな左ジャブ、右ストレートの典型的なボクサータイプで、そのシンプルな武器でここまで勝ち残ってきたのだから、たしかな実力者である。
 
 石田がターゲットにするのは当然WBA王座。チャンピオンの井上拓真が2月のプライムビデオ興行で防衛戦(対ジェルウィン・アンカハス)を控えており、石田の標的はその試合後に定まることとなりそうだ。
 
 また昨年は3戦全勝で防衛数を伸ばすと同時に賞金1000万円の「モンスター・トーナメント」を制した日本チャンピオンの堤聖也(角海老宝石)。この間に立派な世界挑戦者として目されるようになるほど実力評価を高めた。世界4団体のすべてでランキングを持っており、今年は上を見据えていいのではないか。

比嘉や元K−1王者に続きあの話題の選手も

 西田に敗れた比嘉はその後4連勝中。西田戦黒星の影響やフライ級からバンタム級に上げたことによる階級の壁もあって、代名詞の豪快KOから遠ざかっていたが、ここ2試合はともに4回KO勝ち。攻撃的なボクシングスタイルは健在で、どの試合もハズレがない。比嘉は、4団体で世界ランキング入りしている。ここらでそろそろ大勝負のチャンスが来ればおもしろい存在だが——。

 まだいる。元K−1王者でボクシング転向後8連続KO中の武居由樹(大橋)。強打の変則サウスポーはOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王座を返上し、階級を下げてバンタム級に転向。同門の井上尚弥がスーパーバンタム級を制圧していることもあり、まずこのクラスで世界を狙うことになる。バンタム級のボクサーたちにとっては脅威の侵略者に違いない。

 24年の世界バンタム級戦線にフォーカスすると以上の選手が絡んできそうだが、ほかにも、再浮上を期すベテランやじっくり力を付けている段階の新鋭など、バンタムはバラエティ豊かな階級である。1月にプロ3戦目に臨む那須川天心(帝拳)もやってくるかも……。


VictorySportsNews編集部