スポーツを愛する方々へ! 年末年始は「宝さがし」を楽しもう!

スポーツ観戦の楽しみ方は人それぞれで、特別な作法はない。スタジアムやアリーナを居酒屋のように使ってもいいし、ゴール裏や外野席で熱狂的に応援してもいい。もちろん一人で静かにプレーを眺めていてもいい。

ライターとして生計を立てている以上、行動が完全に自由というわけではないが、筆者は単独観戦派である。そんな自分にとってスポーツ観戦、取材の楽しみは「宝さがし」だ。

才能という「お宝」を見つけることの喜びは種目を問わないし、他の何ごとにも替えられない。実は秋の季語として歳時記に掲載されている「スポーツ」だが、宝さがしを一年でもっとも楽しめる季節は冬。年末年始は育成年代の全国大会が目白押しに開催されており、特に首都圏と近畿圏は「宝さがし」を楽しめるイベントが複数ある。

メジャーな全国大会としては高校サッカー選手権、高校バスケのウィンターカップ、高校バレーの春高と、高校ラグビーの花園大会がある。

もちろん観戦対象を育成年代に絞る必要はない。大みそかには格闘技のビッグイベント、元日にはニューイヤー駅伝とサッカー天皇杯決勝があり、2日と3日には箱根駅伝がある。3日にはアメリカンフットボールの日本一決定戦ライスボウルが東京ドームで開催される。大学ラグビーやジャパンラグビートップリーグも、シーズンの大詰めだ。またバスケのBリーグも年末年始にリーグ戦が組まれている。

これらの大会、イベントはCS局にさえ加入していれば、自宅に居ながらほとんどテレビで見られる。最近はインターネット経由で視聴できることも多い。「ライト」なスポーツファンなら無理に酷寒の屋外へ出る必要はない。しかしよりディープで、コアな楽しみを追求するなら現場へ行くしかない。何しろ年末年始は10連戦どころか20連戦以上も可能だ。週末はもちろん平日にも魅力的なカード、イベントが多い。

今回はスポーツの秋ならぬ「スポーツの冬」の山場である、年末年始のイベントを一挙に紹介しよう。時間と体力に余裕があり、なおかつスポーツ観戦にストレスより喜びを感じる方は、ぜひ掛け持ちに挑戦していただきたい。

中学生年代、高校生年代の注目大会

12月25日から28日まで、筆者は高校バスケのウィンターカップを取材する予定だ。他にも首都圏なら高円宮杯U-15サッカー選手権大会の準決勝が26日、決勝が28日に開催される。

近畿地方ならばバレーボールのJOCジュニアオリンピック(全国都道府県対抗中学大会)が25日から28日まで大阪府で開かれている。また29日から31日は、兵庫県で全国ジュニア・ラグビーフットボール大会がある。いずれも中学生年代の選抜チームによる大会だ。

「大人より中学生の方が面白い」などと言えば、危険人物視されかねないが、実際そう思うのだから仕方ない。高校生や大学生の大会になると選手はもうそれなりに知名度があって、さまざまな記事で個々の特徴も周知されている。一方で中学生年代は中3で日本代表入りした男子バスケの田中力(横須賀市立坂本中)のような例外を除けば、基本的に全員が無名。自分もそれなりにアンテナは張っている方だが、現場で初めて知る選手が多い。

もちろん中3、中2の段階では台頭していない選手も多いし、仮に目立っていても成熟した選手ということではない。しかしこういう場で活躍していた選手は、高確率で次のステージにも絡んでくる。

特にバレーボールのJOC杯は未来の全日本の登竜門になっていて、そうそうたる選手がここを通過していった。自分が見に行った5年前の大会では、金子聖輝が「JOC・JVAカップ」を受賞していた。彼は高卒後すぐ実業団入りし、現在はJTサンダーズで活躍している。

自分が「全国ジュニアラグビー」を初めて見たのは3年前だが、大会優秀選手だった細木康太郎、原朋輝(共に神奈川県スクール選抜)は桐蔭学園、福井翔太と隠塚将太朗(共に福岡県選抜)は東福岡、水谷虎哲(京都府中学校選抜)は京都成章の主力として花園に戻ってくる。過去の経験に照らし合わせて考えると、バレーやラグビーは野球やサッカーに比べて「有望な中学生がそのまま残る」確率が高い。

高校ラグビー、高校サッカーは年をまたいで開催される。高校ラグビーの花園大会は12月27日、28日に1回戦が行われ、30日に2回戦、1月1日に3回戦、3日に準々決勝、5日に準決勝、8日に決勝というスケジュールだ。

自分は「12月30日」に花園で高校ラグビーを定点観測している。30分ハーフで試合時間が短く、朝9時から夕方まで1日最大6試合見られるため、気になるチームや選手をまとめて見られるのだ。

個人的に花園観戦史上最高の発見は深谷高1年時に見た山沢拓也(現・パナソニック ワイルドナイツ)。「クマガヤサッカースポーツクラブ出身の1年生がレギュラーで出ている」と気になって見に行ったら、目の前で4トライを決める鮮烈な大活躍を見せていた。彼は今や2019年ラグビーワールドカップのジャパン候補だ。

(C)The Asahi Shimbun/Getty Images

高校サッカーは30日に開幕カードが1試合だけ行われ、31日が1回戦、年が明けて2日が2回戦、3日が3回戦、5日が準々決勝、6日が準決勝、8日が決勝と続く。

春高バレーは高校バスケと同じ東京体育館が会場で、開催期間は1月4日から8日。かつては春休みに開催されていたが、2011年から他競技と時期を合わせて3年生が出場できる時期に日程を移した。

(C)The Asahi Shimbun/Getty Images

小学生年代、トップの大会も見逃せない

1月4日、6日、7日は天皇杯・皇后杯全日本総合バスケットボール選手権大会(オールジャパン)のファイナルラウンドに足を運ぶ予定だ。開催地はさいたまスーパーアリーナ。4日は男子の準々決勝4試合、5日は女子の準々決勝4試合、6日は男女の準決勝2試合、7日は男女決勝が行われる。

ファイナルラウンドはBリーグ、WJBLの8強が登場する「バスケ日本一決定戦」で、今年からは日本最大のアリーナで開催されることになった。会場の雰囲気も含めて楽しみが多い。

野球はプロもアマも原則として12月、1月がオフシーズン。しかし「禁断症状」が出て耐えられない方は冬の北海道へ飛べばいい。12月27日から29日に、札幌ドームで「NPB12球団ジュニアトーナメント2017」が開催される。これは各地域の有望選手が12球団の「ジュニア」として選抜チームを組んで行うトーナメント戦。今年で13回目を迎える大会だ。

プロ野球はサッカーのような一貫教育があるわけでなく、さすがに小学生は「青田買い」をするにも早すぎると思っていた。しかし近藤健介(日本ハム)、松井裕樹(楽天)、森友哉(西武)、田口麗斗(巨人)といった過去の出場選手を挙げれば分かるように、ジュニアトーナメントはNPBへの登竜門になっている。

また鹿児島では全日本少年サッカー大会が開催される。この大会も数多くの日本代表を輩出した伝統の大会だが、2015年から開催時期を夏休みから冬休みに移し、会場も鹿児島に変わった。

自分も1月1日にどこかへ出ていれば17連戦になるところだった。ただ例年の習慣として、元日だけは実家でゆっくりしている。自分が好きでやっていることとは言え、やり過ぎはよくないからだ。

しかし「休もう」「スポーツから離れよう」と思うのに、私のようなスポーツ中毒はそれでも駅伝や天皇杯、高校ラグビー3回戦を朝から夕方まで延々と見ることになる……。

スポーツ観戦、冬の宝さがしは楽しい――。一方であなたの時間を奪い、家族や友人から愛想をつかされるという副作用もある。他の娯楽と同様で、魅力的な趣味ほど中毒の危険性が高い。観戦量のコントロールはあくまでも「自己責任」でお願いしたい。

<了>

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大島和人

1976年に神奈川県で出生。育ちは埼玉で、東京都町田市在住。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経たものの、2010年から再びスポーツの世界に戻ってライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビーなどの現場に足を運び、取材は年300試合を超える。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることが一生の夢で、球技ライターを自称している。