「思い通りに歩んだ人生ではない」

―今回、ビデオメッセージサービスPasYou に参加していただきましたが、どこに魅力を感じていただけましたか。
太田:僕の声を求めてくれている人に対して、直接届けられるということに魅力を感じました。以前からInstagramやTwitterにいただいた質問に答える機会はありましたが、SNSだけだと、勇気が出ずにコンタクトが取れない人もいると思うので、そういう人たちに、しっかりした段階を踏んで、その人が求めていることを、僕が自分の声で届けられるのが一番の魅力ですね。

―特にこんなメッセージを送りたいというイメージはありますか。
太田:僕が経験してきたことや、今思っていること、考えていることを、1歩踏み出せるように悩んでいる人に対して、僕の言葉で何か伝えられれば嬉しいです。

―1対1の空間をどのように活用していきますか。
太田:その人が本当に求めているものや、多くの人の前では言えないようなことを、僕の言葉で伝えていきたいと思っています。

―連載企画で伝えたいことはなんですか。
太田:レスリングを小さい時からやっていましたが、思い通りに歩んだ人生ではないので、その中で悩んだことや、うまくいかない時にやっていたことなど、少しずつ伝えていきたいです。「オリンピックで金メダル」と「世界チャンピオンになる」という目標をレスリングで立てていて、オリンピックでは銀メダルでしたが、世界チャンピオンにはなれたので、僕が目標を達成するためにやってきたことや考えてきたことも伝えていきたいですね。

―挫折経験はありましたか。
太田:世代ごとに常に全国1位という成績を残していましたが、レベルが上がっていくごとに通用しない期間がどんな選手にもあると思っていて、僕も上のカテゴリですぐに活躍できたかと言われればそうではありませんでした。

―影響を受けた方はいますか。
太田:恩師にはいろいろ相談しましたね。レスリングを続ける上で導いてくれました。でも、関わってきた人全員から影響は受けていますね。

―人生で一番難しかった時期はありましたか。
太田:大学1,2年生の時は、なかなか勝てなかったので、レスリング人生においてしんどかった時期ですね。あとはリオオリンピックが終わってからライバルができて、東京オリンピックの内定をもらうことができなかったのも苦しかったです。でも、競技ではたくさん悩みましたが、人生では「なんとかなるだろう」と思っていたので、あまり悩みはありません。

「アスリートが活躍する場を増やしていきたい」

―アスリートが発信をしていく意義はどんなところにあると思いますか。
太田:まず、アスリートが発信をするツールが少ないですね。有名な選手であれば、メディアに露出する機会があるかもしれませんが、そういう機会がない選手はSNSを使って発信をしていくのがベストだと思っています。また、競技のことはメディアが伝えてくれますが、試合やトレーニング以外の時間の方が多いので、そこの考え方や生活の仕方を発信するためにSNSは必要なツールだと思っています。

―アスリートは競技に集中すべきという意見に対してどうお考えですか。
太田:古いですね。実際そういう人たちも、アスリートの競技以外の部分を見たいと思うのですが、しきたりや伝統に重きを置いてしまうので、そういう意見に繋がってしまうのかなと思います。SNSをやって、メディアに出る機会が増えたり、個人でビジネスをやったりしても、競技を疎かにするわけではありません。むしろプラスになることの方が多いと思っています。

―SNSをやったことにより、どんなことがプラスになっていますか。
太田:発信をすることによって、見られているという意識もあるので、より良い生活ができると思っています。参観日のように、親が見に来ていたらいつもよりしっかりやろうと思うのと同じで、人に見られている自覚を持つことで、質の良い生活ができて、自分がトップアスリートであるという意識を持つことができます。

―今後の展望を教えてください。
太田:最終的な目標はUFCでのチャンピオンなので、今はRIZINでトップになりたいです。

―競技以外の面で目標はありますか。
太田:競技以外では、「T3.」での活動など、競技以外の時間をうまく使った、アスリートが活躍できる場所を増やしていく活動ができればいいなと思っています。やりたいと思っていても踏み出せない人や、やり方がわからない人がたくさんいるので、一つのモデルのようになれれば嬉しいですね。僕も紹介してもらったり、いろいろな話を聞く機会があったりして、少しずつその気持ちを持てるようになってきました。

<前の記事【太田忍インタビュー】Vol.1 「一番高いところを目指したい」MMAに転向して思うこと

2016年リオデジャネイロオリンピック銀メダル、2019年世界選手権金メダルなど、レスリングで輝かしい記録を持つ太田忍選手が、2020年12月に総合格闘技デビューを果たした。総合格闘技のデビュー戦となったRIZIN.26では、所英男選手と対戦し一本負けを喫した。現在では右ひじの靭帯断裂のため、治療やリハビリを行なっている。vol.1では、太田選手が現在の心境やレスリングと総合格闘技の違いなどを語ってくれた。

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VictorySportsNews編集部