まず何と言っても日本代表でしょう。2022年カタールワールドカップではドイツ、スペインを破ってベスト16に進出し、今年は更なる躍進が期待されましたが、その期待どおりの結果を出してくれたと思います。
森保一監督が続投したのがいい結果をもたらしました。大幅にメンバーを入れ替えた3月はウルグアイに1-1、コロンビアには1-2と勝てませんでしたが、その後は絶好調。エルサルバドルを6-0、ペルーに4-1と勝利を収め、アウェイで再びドイツを4-1と大破し、大幅にメンバーを入れ替えて臨んだトルコにも4-2で勝ちました。
さらに、2022年カタールワールドカップ直前には1-2と敗れていたカナダを4-1と退けると、チュニジアを2-0と完封。そして始まった2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップ予選では、まだ2次予選とは言え、ミャンマーとシリアをともに5-0と大勝して、最高のスタートを切っています。
今年の第2次森保ジャパンは今までの集大成とも言える戦いぶりでした。森保氏が監督に就任して4年間かけて成長させたチームが、2023年に見事に花開いたと思います。また、名波浩、前田遼一という2人の新コーチを入れて戦術の幅を広げ、チームは一回り大きくなりました。
代表選手たちもヨーロッパ各国のリーグで活躍を見せていて、「個」の成長ぶりも見て取れます。たくさんの選手がクラブでいい成績を出して、それが代表チームにも還元され、加速度的に強くなるのではないでしょうか。2024年も楽しみですし、期待が膨らみます。
続いてJリーグ。J1ではヴィッセル神戸が、J2では町田ゼルビアが初優勝を果たしました。これは「しっかりと投資したクラブが結果を出した」ということで、僕はサッカー界のためにはよかったと思っています。
J1では横浜F・マリノスと川崎フロンターレの2チームが2017年以降の6年間にわたってチャンピオンの座を手にしてきました。そこに2014年のガンバ大阪以来となる関西勢が優勝したということで、新しい時代の幕開けを感じさせてくれます。
J2の町田も青森山田高校から黒田剛監督が転身し、1年目で見事にクラブの悲願だったJ1昇格を果たしました。シーズン前に19人補強し、シーズン中も5人を獲得するなど、何としても昇格するのだという執念が見事だったと思います。
Jリーグは観客も戻ってきました。過去のJ1リーグの平均観客動員数の記録は初めて2万人を突破した(20,751人)2019年でした。ですが、新型コロナウイルスの影響で無観客試合や観客数の制限を設けていた2020年から2022年までの3年間、大きく落ち込んでいました(2020年: 5796人、2021年: 6661人、2022年: 1万4328人)。
今年は様々なプロモーションもあってかなり回復しています。今年のJ1平均観客動員数は今年は平均1万8993人と、2019年の約92パーセントまで戻しています。天皇杯決勝の川崎フロンターレ対柏レイソルも、天皇杯決勝における最多入場者数である6万2873人を記録しました。また、東京ヴェルディと清水エスパルスが戦ったJ1昇格プレーオフ決勝には5万3264人が詰めかけるなど、大きな盛り上がりを見せました。
ただ、ここで一つ言っておきたいことがあります。それはプレーオフという特別な状況だったにせよ、5万人以上が詰めかけるほどサッカーファンがいるということです。だったら同じくらい緊迫した熱い試合をしていれば、日頃からもっと観客数が増えてもいいはずです。シーズン中からもっと魅力のあるサッカーをすれば、さらに多くの人に見てもらえるようになるのではないかとぜひ考えてほしいと思います。
そして2023年と言えば、7月から8月にかけて開催されたオーストラリア・ニュージーランド女子ワールドカップでした。なでしこジャパンはザンビアを5-0、コスタリカを2-0、そしてスペインを4-0で破ってグループリーグを首位で決勝トーナメント進出。ベスト16ではノルウェーに3-1と競り勝ち、準々決勝では惜しくもスウェーデンに1-2と敗れたものの、健闘したと言えるでしょう。
若い世代に切り替わったチームはとても伸び代を感じさせてくれました。すぐに優勝を狙えるとまでは言えないものの、課題は見えていますし大きな期待ができると思います。来年のパリ五輪でもどこまで行けるのか楽しみです。
こうやって振り返ると、2023年はいろいろ楽しいことがありました。いろいろ思い出しながら年を越そうと思います。それではみなさま、よいお年を!!
【前園真聖がサッカーを紐解く連載コラム】2023年は明るい未来を感じさせる素晴らしい年でした
いよいよ年の瀬も迫ってきました。そこで今回は今年のサッカーシーンで印象的だったことを振り返ってみたいと思います。
日本-ドイツ サッカー日本代表, ドイツに快勝し,喜ぶ日本イレブン=2023(令和5)年9月9日 ©共同通信