「セスタオのユニフォームが欲しい」サポーターの声に応えて得たもの

―ユニフォームの件について教えてください。
丹羽:日本のサポーターの方から「セスタオのユニフォームを買うことはできませんか」と問い合わせがたくさんあったので、8月のシーズン始めにクラブの方に「日本の方にユニフォームを買えるシステムを作ってくれませんか?」と相談してみました。ですが、チームは今まで日本人と契約したのが初めてで、そういう流通のシステムが確立されていないことや、日本への送り方、送料、税金、関税など懸念材料が多く、今回は協力したいけど難しいです、と断られてしまいました。それでも、どうにかユニフォームを日本に届ける方法はないかと模索した結果、自分で直接クラブからユニフォームを購入して、自分で発送すれば、日本に届けられるのではないかという考えを思いつきました。その考えをクラブの方に伝えたら、「大輝が良いなら是非!」という答えをいただき、僕の想いに賛同してくれたクラブの方が今回だけ特別に日本の国旗とバスクの国旗、漢字とローマ字で名前を入れてもらった、オリジナルユニフォームを作っていただきました。

ユニフォームに関して動き始めたのが8月初旬で諸々準備をして、ユニフォームが完成したのが4ヶ月後の12月でした。出来上がった後に自分でグッズショップに行って、自分のクレジットカードで直接購入してそのまま家に持ち帰り、そこから全てのユニフォームにサインを入れました。ユニフォームのやり取りで間に入ってもらっていた僕の後援会の方から、「名前を入れてください」とか「一言、丹羽ードやメッセージをください」というような要望もあったので、その要望に応えて一枚ずつサインとメッセージを書かせていただきました。そこから梱包も妻と僕でしたのですが、今回の作業をやってみてJクラブのグッズ担当の方や、ユニフォーム発送してた方は、こんな大変な作業を今まで僕たち選手のためにしてくれてたんだなと感謝の気持ちを身を持って感じる事が出来ました。
最終的に発送完了に至るまで注文してから半年間くらいがかかりました。


―何が一番大変でしたか。
丹羽: 「手作業で全てのユニフォームを梱包する」とか「キチンとユニフォームを日本に送れるのか」といったことですね。配送業者を調べることもそうですし、各サイズの注文枚数やサイズなどを強化部長とやり取りしました。妻にも色々と手伝ってもらいながら、まるでJクラブのグッズ担当になったような気分でした。少しでも枚数に不備があったり、一人でも送り届けられなかった場合、再度ユニフォームを作ってもらうのに半年くらいかかってしまうので、ずっと日本に届くまで心配していましたが、無事に不備もなく送り届けることができました。ユニフォームをスペインから日本に届けることがこんなに大変なんだと、身を持って経験する事が出来ました。本当に僕のセスタオのユニフォームを欲しいという方にお届けできたことも良かったですし、時間と手間は掛かりましたが、やって良かったなぁという思いで一杯でした。今回、ユニフォームを発送する中で、何百枚という注文があり、日本の方から需要があることに気付きました。たまたまそのタイミングで年末のオフに岡ちゃん(岡崎慎司)の家族がウチに遊びに来てくれて食事をする機会があったのですが「自分のクラブのユニフォームが簡単に日本で買えるように、今回の丹羽君が手作業でやった事がシステム化されれば良いなぁ」と岡ちゃんも言っていたので、今後世界各国で戦っている日本人のユニフォームを、日本に届けられるシステムはないか模索していく必要があるのではないかと思いました。ただ、輸送の問題、税金の問題など、その国によってコロナや色々な制限があり、難しいということも感じています。ですが、今回何よりも嬉しかったのはユニフォームを届けた日本のサポーターの方がとても喜んでもらえたのが何より一番嬉しかったです。
今後、日本に海外組のユニフォームを送れるシステムが出来るように模索していきたいと思っています。

―需要があるんですね。
丹羽:僕でもたくさんの方が注文してくださったので、他の日本人選手も間違いなく需要はあると思います。現日本代表でバリバリ活躍している海外組の選手は、オンラインや日本のスポーツショップでユニフォームが買えると思いますが、それ以外の選手のユニフォームを欲しいと思っている方は実際に他にもたくさんいると思っています。そういった方が、ネットで簡単に買えるシステムがあれば、便利だと思います。

「全国に丹羽大輝ファンがいる」ユニフォーム発送を経て大きなモチベーションに

―実際に丹羽選手の個人の後援会の方と一緒に作業をやったみたいなのですが、いかがでしたか。
丹羽:後援会の方には本当に感謝しています。
ユニフォームの注文の枚数やサイズ、送り先の住所など全て間に入ってもらって、サポートして頂きました。
僕の個人の後援会のことを少しお話しさせていただくと、ガンバ大阪時代に、プライベートで家族で行くお寿司屋さんがあったのですが、そこの大将と家族ぐるみで仲良くなり、「家も近いし、丹羽ちゃんの個人の後援会、俺が作るよ!」と言っていただいたのがきっかけで、その時に僕の後援会が誕生しました。そこから色んな輪が広がり、事務所が出来たりしました。それ以降広島に移籍しても、東京に移籍しても、セスタオに移籍しても、ずっとサッカー選手、丹羽大輝の事を応援してくれています。毎年1回、丹羽大輝後援会感謝祭と言うパーティーをしているのですが、僕と後援会メンバーの絆は物凄く強いと思っています。
今回のユニフォームの件も、最初は自分でやろうとしていたのですが、よくよく考えてみたら個人で全て作業するのは難しいと思い、後援会の方にご相談させていただき、色々とサポートをして頂きました。

―後援会の方も嬉しいですよね。
丹羽:そうですね。後援会の方の中でもユニフォームを買っていただいた方もいました。
本当に色んな方の想いが詰まったユニフォームになったと思います。
何事も諦めず可能性のある限りやりたい事、目標に向かって進む事は本当に大切なんだと今回の活動を通して改めて思いました。

―さすがですね。普通、クラブから1回断られたら諦めてしまいます。
丹羽:普通だったら「すいませんでした」の一言で諦めてしまう案件かもしれないのですが、よくよく考えたら「自分が間に入って少し頑張れば日本に届けられるのではないか?」と思いました。買うこともできるし、送ることもできる、サインもメッセージも書けるし、梱包もできる。後はどのくらい時間が掛かるか、キチンと日本に送る事が出来るか、と言った事が少し読めなかったのですが、「やろう」と決めたからには、もう動き出していました。

―丹羽さんにしかできないですね。
丹羽:何よりも「本当に欲しい」という方がいて、その方にお届けできたことが一番嬉しかったです。
今回の活動で勉強になったこともたくさんありましたし、いろいろな方の協力もあって、無事に日本に送り届ける事が出来ました。来年、自分がどこの国で、どのチームでプレーするかはまだわかりませんが、もし海外のチームでプレーするのであれば、継続して本当に欲しい方にユニフォームを届けたいと思っています。

―実際に受け取ったサポーターの方の感想はいかがでしたか。
丹羽:SNSで連絡をくれたり、後援会の方からのフィードバックがあったり、とても喜んでいただいたのを肌で感じました。メッセージをくれたり、ストーリーで反応してくれたりして、とても嬉しかったです。

―今までにはなかった感情でしたか。
丹羽:Jリーグの時には、自分のユニフォームが誰に届いているか、何枚届いているかなど詳細は何もわかりませんでしたが、今回はどこの県から何枚購入されているのか、年齢、性別など少し詳細を知る事が出来たので、「全国に丹羽大輝ファンがいるんだ」とモチベーションが上がり、とても嬉しかったです。

―丹羽さんのような選手になっても嬉しいものですか。
丹羽:今後Jクラブも全ての個人情報を、選手に見せる事は出来ないと思いますが、売れたグッズに関して「○○県が○人」「女性が○人、男性が○人」「○歳が○人」など、購入して頂いた方のちょっとした個人情報を選手と共有することは大切なのではないかと、今回の経験で感じました。その情報があれば、選手も「自分はこういう年齢層に人気があるんだ」「女性より男性の方が人気があるんだ」など、僕みたいに喜んだり、モチベーションアップする選手もいると思いますので、是非色んなJクラブで取り組んでもらえたら面白いと思います。

―ファンの方もそうやって喜んでくださっているというのを聞くと嬉しいと思います。
丹羽:例えば、SNSで「東京都で購入してくださる方が多かったのですが、僕の地元は大阪なので、大阪の方、ぜひ購入してください!」など冗談も交えながら発信していくのも面白いと思います。よくクラブでやっているのが、ユニフォーム上位売上ランキングとかですが、購入してくれたユニフォームの方の詳細を選手と共有して、更にユニフォームを買ってもらえるように、選手とクラブが一緒になって活動をしていくのも面白いと思います。


VictorySportsNews編集部