「苦しい時に辛抱強く、行動を起こす」物事がうまくいっていない人に伝えたいこと
―アカデミー時代にうまくいかなかった時期はありましたか。
田口:ありました。いくつかありますが、一つは、中学3年生の時にNIKEプレミアムカップという大会があったのですが、僕が所属していたマリノスのジュニアユースが決勝で京都サンガと戦い、0対1で負けてしまって世界大会にいけませんでした。その1失点は、僕がクロスボールをキャッチミスしてしまって、それを詰められて決められてしまったのが原因でした。チームが世界に行けたはずなのに、僕のせいでそのチャンスを逃してしまったので、凄く落ち込みましたし、自分を責めた覚えがあります。当時は受け入れられませんでしたが、「また一緒に頑張ろう」、「おまえのせいじゃない」と仲間たちに言ってもらい、もっと自分に厳しく練習して、チームを勝たせる存在になりたいと思いました。自分が向上しようと思うタイミングは、だいたい悔しい思いをした時や、うまくいかなかった時だったなと感じています。
―他にも挫折した出来事はありますか。
田口:高校3年生の夏前くらいに手首を骨折してしまって、夏のクラブユースの全国大会に出られませんでしたし、Jユースも出られなくて、ユース卒業までの半年間プレーできませんでした。その時は、アンダーの日本代表にも選ばれていたのですが、その活動にも途中で参加できなくなってしまって、トップチームにも昇格できるかどうかのタイミングでの大怪我だったので、不安が強かったです。
―トップ昇格してからはいかがでしたか。
田口:トップ昇格してからは、レベルが高すぎて、「試合には出られないだろう」と思うくらいでした。自信満々で上がったのですが、大きな差があることがわかり、心を折られましたね。
―その経験を通してどのようなことを伝えたいですか。
田口:誰もが壁に当たったり、うまくいかなかったり、たくさん準備をして満を持して挑戦したのに失敗したことが絶対あると思います。当事者はなかなか考える余裕はありませんが、大事なのはその失敗やミスの捉え方で。そこからどれだけ学んで成長できるか、その時点でできなかったことは自分の実力であると受け入れて、成功するためにはどうしたらいいかを考えることが大事だと思っています。僕も最初は考えられませんでしたが、要所で、悔しい気持ちを持って、そこからまたやってやるという気持ちで臨んでいました。苦しい時に辛抱強く、そこから行動を起こすことが大事だなと思っています。
「勇気や影響の与え方の一つ」アスリートの発信について
―アスリートが発信していく意義はどこにあると思いますか。
田口:選手は試合に出て、良いパフォーマンスをすることが一番喜んでもらえることであるという考えは当たり前にあって。その一方で、サッカーをしている選手だけでなく、人間として選手自体を好きという人に、選手自らが発信したら、伝えたい言葉を選ぶことができます。なので、選手にとって発信する意義は、自分をより理解してもらうためや、より応援してもらうための一つのツールだと思っています。
―アスリートは競技に集中すべきだという意見に対してどう思いますか。
田口:競技に集中するというのは、ピッチ上の練習や試合だけに集中してやってほしいということだと思うのですが、僕はそれだけが選手ではないと思っています。勇気や影響の与え方は、ピッチ上のパフォーマンスや、ピッチ上で活躍する姿だけではないです。僕は実体験として、SNSで目にした記事で勇気をもらったり、心が不安になっていた時に他のJリーグの選手の発信を見て、今の自分に当てはめて乗り越えることができたりすることが結構あって、それは選手だけでなくサポーターの方にもあるのではないでしょうか。何か感じてくれる人がいることは、発信する意味としてとても大きいですし、誰かの役に立っているのが嬉しいので、アスリートが発信することは良いことだと思います。
「人間万事塞翁が馬」
―今までの人生で最も影響を受けた人はいますか。
田口:マリノスの育成の時からずっと指導してくれた、キーパーコーチの方です。今の自分の性格は最近作られたものではなく、小さい時からの経験や環境があって今の自分がありますよね。なぜこんな自分になったのだろうと考えると、キーパーコーチの方が教えてくれたことが、意識しなくても自然と自分のものになっていたということを感じました。キーパーのことも、もちろん教わりましたが、人として大事なことや、どれだけやり続けられるかということを教えていただきました。特に一番心に残った言葉が「人間万事塞翁が馬」で、意味が「一見良いと思われていることも悪いと思われていることも、それが本当に良いことか悪いことかわからない」ということです。僕の経験で言うと、自分のミスで負けて落ち込んでも、5年後に考えた時に、「あれがあったからもっと練習してプロになれた」と感じることです。何が良くて何が悪いか本当にわからないので、だからこそ良い時も悪い時もやり続けるということが深く心に刺さりました。大人になってから考えると、さらに納得しているので、その方から教えてもらったことは今の自分に良い影響を与えてくれました。
―一番苦しかった時期はいつですか。
田口:高校でユースに上がった時ですね。カテゴリが上がって、強度が上がったので、怪我が増えてしまいました。骨折や肉離れなどは休むしかないですが、少し足首捻挫したとか突き指したというような休むほどではないけどやると痛いくらいの小さな怪我を多くしていて、プレーしていても、サッカーのことではなく怪我のことで意識が取られてしまって、サッカーが面白くないと感じてしまい、練習に行くのが嫌になってしまいました。「サッカーを辞めたい」とまでは言っていませんでしたが、「練習に行くのが嫌だ」と思ったのが、サッカー人生で初めてでした。いろいろな要因が重なって、心がネガティブになってしまっていて、苦しい時期でしたね。
―田口選手はエリートだと思っていました。
田口:よくそう思われます。
「あいつがいれば大丈夫」自分が目指す像
―今季の目標を教えてください。
田口:僕はキーパーというポジションなので、僕が出た時には0失点で抑えようといつも思っています。昨シーズンはホームでも勝てない時期が続いて、僕自身も試合に思うように出られず、出ても勝利を届けられなかったので、個人としては、1試合でも多く試合に出て0点に抑えて喜んでもらいたいです。チームとしては、高い目標を持って、上のカテゴリを目指しているので、その目標のために1戦1戦戦いたいと思っています。
―ファンサポーターからどんな選手に見られたいですか。
田口:「僕が出たら安心する」、「落ち着いて見られる」、「あいつがいれば大丈夫」と思ってもらえるような存在になりたいです。
―競技外の発信していく姿をどう見られたいですか。
田口:僕はサッカー以外に興味があることが多いので、その発信もしていきたいと思っています。「こういう興味があるのか」、「サッカー以外でこんなことやっているのか」ということを知ってもらって、そこからFC琉球を知ってもらい、試合を見てもらえたら一番嬉しいので、発信も今までより力を入れていきたいです。
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【特集】Off The Pitch〜アスリートの知られざる一面〜
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