プラットフォームとしてのバスケットボールチーム 青森ワッツの挑戦〔前編〕

プロスポーツチームと地域活性化

 青森ワッツは、現時点ではB2リーグに属している。国内でも、高い知名度を獲得していると言い難い発展途上のプロバスケットボールチームが、積極的に海外進出する狙いはどこにあるのか。
 
 青森スポーツクリエイションの藤永裕二会長は「地元愛なしでは、プロスポーツチームに未来はない」と語る。

「私たちの狙いは、青森県内での取組だけでは無く、海外のプロスポーツチームとの連携によるスポーツマーケティングプラットフォームを構築し、このプラットフォームを活用して、海外とのビジネス交流、教育交流、文化交流を強化する新たなビジネスモデルへのチャレンジを行い、青森県の地域振興に貢献することです」

 藤永会長は、青森スポーツクリエイションの会長であると同時に、ANEWホールディングスの会長として日本や米国、台湾など世界各国を飛び回る異色の経営者である。神戸の商業高校を卒業後、建設現場で鳶職として働き、わずか23歳で独立。
 
 起業した建設会社が不況の煽りを食うとコンサート業界に転身し、2001年に、2度目の起業。2009年からは米国ロサンゼルスで、コンサート関連事業を起業するにいたったという。

「やっぱり、最後は人を大切すること。人とのつながりですね。米国で出会ったメンバーがきっかけになって、コンサート事業の傍ら、ハリウッド映画への投資事業も始めたんです」

 その後、藤永氏は米国で13社を起業し、3社をエグジット。2015年、日本に帰国し、現在のANEWホールディングスとなる企業をMBOし、取締役会長を務めている。2023年に、青森ワッツの経営権を取得するや、そのグローバルな視点から新たな挑戦を始めた。

「新竹ライオニアーズは、この取り組みに共感をしてくれた重要なパートナーであり、大きな一歩を踏み出す事ができた事に心から感謝しております。今回参加して頂いた企業のマーケティングも各社で大きな手応えがあったと思います。

 また、当チームの寺嶋コーチのパフォーマンス後には台湾人フォロワー数が1日で1万人増え、ブルーリングス(チア)のパフォーマンスが台湾のプロリーグの公式SNSでポストされ、ライオニアーズとのコラボ商品も予想以上の売上となるなど、我々にとっても大きな収穫がありました。このような取り組みを行いながら、プレミア入りを目指します」と力強く語った。

 藤永会長のビジョンに共鳴し、青森県外からワッツDAYへの参加を決めた企業もある。東京三八(東京都調布市)だ。青森ワッツと新竹ライオニアーズとのコラボ商品の販売を行った営業部の福田和広課長は「多くのお客様に美味しいと言って頂き、試食を口に入れた瞬間に嬉しそうな表情に変わるのが良くわかった。準備した商品も完売、大成功のワッツDAYでした」と興奮気味だ。

今後の展開

 青森ワッツDAYでは青森ワッツ・スポンサー企業と新竹ライオニアーズ・スポンサー企業、台湾政府関係者たちに、スポーツを通じたビジネス交流の場が提供された。アジアのバスケットボールチームのオーナーは、その大勢が現地の大企業であり、創業家やオーナーファミリーがチームを運営・経営することも多い。それだけに、バスケットボールプロチームというプラットフォームのなかで、オーナー同士の商談がビジネス成立に直結するチャンスが生まれることも、同イベントに参加するメリットのひとつだ。

 青森スポーツクリエイションでは、海外のバスケットボールチームやバスケットボールリーグとの連携を強化しており、各提携先チームのホームゲーム会場での企業出店や青森県産品のPR活動を予定している。
 
 2024年の1月27日、28日には、新竹ライオニアーズスポンサー企業が出店する新竹ライオニアーズDAYを青森ワッツのホームアリーナであるマエダアリーナ(青森県青森市)で開催することも決まった。
 
 加えて来年中には、台湾の提携先チームが傘下のU15チームのコーチ陣や保護者を含め総勢90名で来青し、合同練習や交流試合など、バスケットボールを通じたスポーツ教育交流が予定されている。また、台湾人選手のレンタル移籍を促進し、ホームゲームへの応援ツアーによる台湾人観光客誘致の強化も目指している。挑戦を続ける青森ワッツに要注目だ。

プラットフォームとしてのバスケットボールチーム 青森ワッツの挑戦〔前編〕

VictorySportsNews編集部