今大会はグループリーグ1位、決勝では韓国かイランと対戦し、そして優勝という結果が必要だと思います。ケガ人が多く、合流以来別メニューが続いた選手や、フルメニューがこなせない選手もいるようですが、それでも関係ありません。

 2023年の日本は9月にドイツとトルコをターンオーバーしながら下しました。現在の日本代表はそれくらいの選手層は持っていると思います。11月の2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップアジア2次予選も、ホームとアウェイで大胆にメンバーを入れ替え。どちらも5-0で勝ちました。さらにJリーガーを中心とした日本代表を組めますから、実質的には3チーム分の日本代表が組めるほどになっています。

 それだけ豊富な人材からメンバーを選考しています。しかもアジアカップの前に登録できる人数が当初の23人から26人に増えたことで、負傷者が出ても対応できるケースも増えました。大会スタート時点で負傷していても、招集して治るまで待っていても試合の先発メンバーに苦労することはないのです。

 そんな選手層を抱え、ここまでしっかり結果を出してきている第二次森保ジャパンですから、本来の力を出し切れば問題ないはずです。ただし、森保一監督も当然考えているでしょうが、グループリーグの間は代表経験の浅い選手を積極的に起用することが大切です。そして経験を積ませると同時に、これまでの経験豊富な選手たちのコンディションを整えさせ、トーナメントの4試合に備えてほしいと思います。現時点で負傷気味の選手たちに無理をさせる必要はありません。

 もっとも、そうやってメンバーを入れ替えながら起用したとしてもグループリーグの首位通過は必ず達成しなければなりません。それが決勝トーナメントに大きな影響を与えます。

 首位で通過すれば、決勝トーナメントまでの期間は中4日。そしてベスト16から準々決勝まで、準決勝まで、決勝までとすべて試合の開催日が中3日になります。ところが2位で通過すればベスト16までは中6日もありますが、その後は中2日、中3日、そして決勝までも中2日になってしまいます。

 今回の大会はグループリーグ3位になっても決勝トーナメントに進出することができますが、3位になると決勝に進出した場合は中2日になってしまいます。もっとも日本が3位になることはまず考えられないと思います。ともあれ、グループリーグ首位になることは、体力を回復させるために必要なのです。

 また、首位で通過した場合、勝ち残っていくとB組1位かF組1位と準決勝で戦うことになりそうです。グループBはオーストラリアが、グループFはサウジアラビアが入っています。FIFAランクで考えると、この2者の勝者と準決勝を行うことになりそうです。

 一方で反対のサイドには韓国やイラン、開催国のカタールなどが上がってくることでしょう。もしも日本が2位で通過ということになれば、この3カ国と次々に対戦して決勝を目指さなければならない可能性が出てきます。

 もちろん各国のいろいろな思惑やコンディションで今後変わってくるでしょうが、首位通過することは優勝への近道になっていくはずです。

 そして今回の大会で僕が期待したいのは、若い世代の台頭です。この合宿が始まったときに冨安健洋が、大会にはU-19のトレーニングパートナーが同行していることから、自身や堂安律、久保建英が同じような年齢で日本代表デビューを果たしている(冨安19歳、堂安20歳、久保18歳)ことを挙げ、トレーニングパートナーの世代がもっと日本代表に入ってきて欲しいという要望を口にしています。

 また、東京五輪の際は多くのメンバーがすでに日本代表入りしていることにも触れています。今回の日本代表に入ってきているパリ五輪世代は、フィールドプレーヤーで言えば久保と細谷真大だけ。もっとも久保をパリ五輪世代と呼ぶには、これまでの実績を考えると無理があります。彼は五輪の選手ではなくて、日本代表の中核なのです。

 となると、パリ五輪世代を背負っているのは細谷と言えるでしょう。細谷がこの大会で活躍すれば、他のパリ五輪世代が台頭しやすくなります。その意味で細谷の責任は大きいのです。個人のためにも、同世代の選手のためにも細谷にはぜひ活躍してほしいですし、僕は応援したいと思います。


前園真聖

鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、2005年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。