「プロサッカー選手としてあるべき姿」とは 今後の日本サッカー発展のために作ったサッカー教室

―ガチンコ真剣サッカー教室をやることになったきっかけを教えてください。
丹羽:僕がガンバジュニアユースやユースの時に、プロの選手と直接触れ合う機会、「こんな機会があったらいいな」と思っていた事を今は自分がプロの選手、逆の立場になって開催することになりました。
僕が育成時代に、ガンバのトップチームが横のグラウンドで練習をしていて、当時は挨拶をするくらいで、プレーのことを聞いたり直接触れあう機会はありませんでした。「あのプレーはどういった事を考えているのか?」「私生活や考え方について具体的にどうしているのか?」など、プロサッカー選手に直接聞きたい事が当時は沢山ありました。それを自分が今プロサッカー選手になって「ガチンコ真剣サッカー教室」として自分が育成時代にプロサッカー選手に求めていたことを中心として、開催することになりました。
2018年FC東京在籍時に、同じ「ガチンコ真剣サッカー教室」を一度開催したのですが、当時はFC東京のチームに所属していたので、場所や時期、選手の招集など、いろいろな制限がありました。今回は僕が海外のチームに所属しているので制限が少なく、自分が思っている形に近いサッカー教室を開催することができました。
それぞれのポジションに特化した選手たちが講師となり、ポジションごとに本格的な指導を行いました。

―実際やってみていかがでしたか。
丹羽:まだまだもっと良くなると思いますし、ただ結果的には最高のサッカー教室になりました。今までのサッカー教室はほとんどが子どもたちとボールを使って触れ合ってゲームをする、といった内容でした。ですが、今回のガチンコ真剣サッカー教室は、僕がセンターバック、フォワードを岡崎選手、ゴールキーパーは清水選手に来て頂き、直接指導して頂きました。本当はミッドフィルダーの選手にも来てほしかったのですが、タイミングなどが合わなかったので、来年はそれぞれ各ポジションの選手を呼んで開催出来たらと考えています。
このサッカー教室は、岡崎選手と昨年スペインで色々とサッカーの雑談をする中で、お互いの考え方や想いが合致し「一緒に開催しよう」となりました。そして半年以上前からリモートで打ち合わせをしながら詳細を詰めていき、今回日本に帰国したオフ期間の際のイベントになりました。場所も岡崎選手自身が作ったグラウンド【Basara Village Green (愛称: BVG)兵庫県神戸市西区平野町印路681-1】が4月にオープンしたてだったので、岡崎選手も地元の兵庫県に何かしらの形で恩返しがしたいと言っていたので、こういった形で岡崎選手の地元の地域でサッカー教室が開催出来て本当に良かったです。

―子どもたちの反応はいかがでしたか。
丹羽:子どもたちの反応や目の輝きが全てでした。僕や岡崎選手や清水選手の想いを今後も心に焼き付け、今回参加した子どもたちの中で人生が変わるきっかけを掴んだり、サッカーを通して人として成長したり、もちろんその先に日本代表や世界に羽ばたく選手が出て来てくれたら嬉しいです。人生はちょっとしたきっかけや出来事で変わると思うので、このサッカー教室がそのきっかけになってくれたら嬉しいです。

―丹羽さんにしかできないプロジェクトですね。
丹羽:今回はメディアの方やSNSなどに対しても少し規制をかけていました。今はSNSが発達し過ぎているため、自分たちの想いが違った形で伝わらないように、自分たちと直接繋がっているメディアの方や、自分たちが信頼できるサッカーチームにお声掛けさせて頂きました。
今回、ガチンコ真剣サッカー教室のYouTubeチャンネル【https://youtube.com/channel/UCkmGbfC0cwoAmMPfd_BcCtg】も立ち上げて頂いたのですが、プロのカメラマンや編集の方も自分たちで準備をしました。今後は内容もしっかり確認しながら動画をアップしていく予定です。

―そこまで「自分たちで」という形にこだわるのはどうしてですか。
丹羽:本物を届けたいからです。
ただ単に「サッカー教室をやりました」ではなく、今後の日本の未来を背負って行く子供達に僕たちがガチンコで真剣な想いでやっていることを伝えたいし、「プロのサッカー選手になるため、長くプロとして活躍し続ける為にはこういうことが大切ですよ」といったことなどを子どもたちに直接伝えたいです。今回は自分達の地元である大阪府と兵庫県のチームの方に直接お話しさせて頂きました。参加費はもちろん無料で、子どもたちにとって最高の機会になるようにという思いのもと、活動させていただきました。
ゼロから立ち上げた活動なので、10年後、20年後どういう形に発展していくかわかりませんが、プロサッカー選手としての在り方など、現役のプロサッカー選手がこういった活動をしていく事は非常に大切なのではないかと思っています。そして、今後は他のプロサッカー選手で同じ想いを持って共感してくれる選手と共に開催を出来たらと思っています。僕らだけでこの活動をずっと継続していくのではなく、同じ志を持ったメンバーや選手など、また若い世代の選手たちにも参加して頂き、今後の日本サッカー界を担っていく子供たちにどんどん繋げていきたいと思っています。

―サッカー教室の今後の展望について教えてください。
丹羽:サッカー選手としてあるべき姿、サッカー選手だからこそできることの意義、社会的影響力、そういったことを中心に活動していけたらと思っています。サッカーで活躍して、メディアの方に注目され、お金を稼いだとしてもそれは一時的なもので、一線で長期的に継続して活躍し続けていくことはとても難しいことだと思います。大事なことは一時的な活躍を目指すのではなく、どれだけ継続的にブレずに自分の成長を求めて生き続けられるかだと思います。今回のサッカー教室は、本当に必要な人、求められる人に直接伝えたいと思っています。
岡崎選手も僕と同じ考えで、SNSの発信の仕方は二人で事前に打ち合わせをして、事前告知をしないことや、サッカー教室が終わった後の発信の仕方など、細かいところまで話し合いました。ただ、求められる方にはキチンと情報を届けたいと思っているので、そのバランスを考えながら発信をしています。

―選手としての成長にも繋がりましたか。
丹羽:はい。今回協賛していただいたスポンサー(BICP、AJINOMOTO、ZOJIRUSHI)の方や、他の選手とやり取りをするなかで色々と勉強になりました。そして何よりもコロナ禍で制限がある中、子どもたちと直接触れ合えたことがとても良かったですし、これからも継続していきたいと思っています。
一番の目的は、来てくれた子どもたちに対して、直接話しをしたり、直接指導して伝えることですが、これからサッカー選手を目指す人、現在サッカー選手の人、サッカー指導者の人などサッカー関係者の方にも幅広く知って頂ければと思っています。

―では今回のサッカー教室を経験してサッカー選手としての本当の価値とはどんな事だと思いますか。
自分自身がサッカー界、日本の社会、世の中に対してどれだけ貢献していけるか、良い影響を与え続けれるか、応援して頂いてる方にどれだけ感動や夢を与え続けられるかがプロのサッカー選手としての在り方だと思います。その中で自分の幸せは人の幸せ、人の幸せは自分の幸せ、と思える心を持つことは非常に大切な事だと思います。
追いかけるもの、求めるものの順番を決して間違えてはいけないという事です。



「感謝の気持ちしかない」コロナ禍を経て、やっと触れ合えたサポーターとの絆

―オフシーズンにJクラブのチームにトークショーをやることになったきっかけを教えてください。
丹羽:古巣のJクラブの方から連絡があり、スペインのオフ期間のタイミングで日本に帰国しているタイミングでトークショーに呼んでいただきました。トークショーは基本的に引退した選手が呼ばれることが多いので、最初、どんな話をしたらいいのか、何を話したらいいのか、全く想像がつきませんでした。また、以前所属していない他クラブの方からもトークショーやイベントのお話をもらったのですが、まずは自分が所属したクラブからだと思い、サンフレッチェ広島、ガンバ大阪、FC東京の3クラブに参加させていただきました。
お世話になったクラブやサポーターの方に対して、先ずは感謝の気持ちを伝えたいと思ったのがトークショーやイベントをやるきっかけの一番の理由です。

―トークショーで直接ファンの方と交流してみていかがでしたか。
丹羽:自分のことを覚えていてくださっているファン、サポーターの方が多く、温かく迎えてくれて、どこのクラブでも真摯にサッカーに向き合ってきて良かったと思いました。僕らは応援してくれる方々がいてサッカーができるので、ありきたりの言葉かもしれませんがファン、サポーターの方はこれからも大切にしていきたいと思っています。クラブ関係者やファン、サポーターの方に「トークショーに来てくれてありがとう」と言って頂いたのですが、こちらこそ「トークショーに呼んで頂きありがとうございます」といった感謝の気持ちでいっぱいでした。

―良い経験になりましたか。
丹羽:本当に良い経験になりました。コロナ渦でこの2年間、サポーターの方と直接触れ合う機会がほとんどなかったので、トークショーはもちろん楽しかったですが、スタジアムを移動する際とかに歩きながら直接お話ししたり、写真を撮ったりすることができて、本当に幸せでした。
ただ、今スペインではマスクの着用義務がないので、日本で皆さんがマスクをしているのが少し違和感があり、屋外の暑い場所でもマスクを付けていたので、皆さんの体調が少し心配になりました。スペインでは現在はスタジアムでは全員がマスクを外して応援していますし、練習場のロッカールームでもマスクを付けてないので、1日でも早く元通りの生活に戻って欲しいと思います。

―トークショーをやってみていかがでしたか。
丹羽:率直に自分にはトークショーが向いていると思いました。自分自身物凄い楽しかったですし、色んな方が喜んでくれたので、とても自分にピッタリなイベントでした。僕は外に出て、様々な人と触れ合って、コミュニケーションを取ることによって、自分の脳と体のリズムが出るタイプだと思っています。トークショーが終わってホテルに帰ってきた時にはまだまだ話し足りなかったと思ってしまうくらい楽しかったです。
アビスパ福岡に関しては、試合前のトークショーでスタジアムで応援歌を歌えましたし、来年はサポーターの方と一緒にスタジアムで応援歌を大声で歌いたいです。
自分の考えや、私生活など、こういったイベントで自分らしさをどんどん色んな方に知って頂けたらと思っています。それも、昨年、1月にスペインに渡った後に無所属のままチームを探していた4ヶ月間があったからこそ、よりそう思えたのかもしれないです。あの時期があったからこそプロサッカー選手としてプレーして、生活が出来ることはこんなに幸せなことなんだと思えることができました。

「優勝&自動昇格」創立100周年を迎えるクラブの展望

―新シーズンはいかかでしょうか
丹羽:今シーズンは2年目なので、キャンプの期間が充実感で満たされています。去年から知っているメンバーもいて、クラブの事情も知っているという状況が、本当に自分の中で良い方向に働いていると感じています。昨年のキャンプでは何もかもが全く分からない中でのスタートでしたが、今年は昨年の経験のアドバンテージを持ちながらキャンプに参加しているので、ここまで順調に怪我もなく、充実したプレシーズンの期間を送れています。

―昨年は、あと一歩のところで昇格できませんでしたが、今年はいかがですか。
丹羽:昨年はリーグ戦は勝ち点2という差で優勝&自動昇格ができず、昇格をかけたプレーオフの決勝戦もラスト10分で失点してしまい、全てがあと一歩のところで昇格に届きませんでした。今年はその一歩を埋めないといけないと思っていますし、もちろん優勝&自動昇格を狙っています。昨年、プレーオフでの一発勝負の難しさや怖さを知っているので、昨年の悔しさを胸にリーグ戦で優勝して自動昇格をしたいです。

―新シーズンに向けて抱負をお願いいたします
丹羽:昨年プレーオフ決勝進出という、ある一定の成績を残したのですが、選手が結構入れ替わってしまいました。Jリーグだったらある程度、前年度に結果を残した翌シーズンはこういった大幅な選手の入れ替えは少ないです。ただ、僕はそれだけクラブとして本気で今年は昇格を狙っているという強い想いを感じています。そして何よりも2022-2023シーズンはクラブ創立100周年ということで、スタジアムが改修されたり、クラブの覚悟を感じているので、昇格をしてメモリアルな年にしたいです。


VictorySportsNews編集部